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第四編 親族

第一章 総則

第725条〔親族の範囲〕

  左に揭けたる者は、これを親族とする。
一 六親等内の血族。
二 配偶者。
三 三親等内の姻族。

第726条〔親等の計算方法〕

  親等は親族間の世数を算してこれを定める。
2 傍系親の親等を定めるるには其一人又は其配偶者より同始祖に遡り其始祖より他の一人に下るまての世数による。

第727条〔養子の親族関係の発生〕

  養子と養親及び其血族との間において、は、養子緣組の日より血族間におけると同一の親族関係を生する。

第728条〔継親子の親族関係〕

  継父母と継子と又嫡母と庶子との間において、は、親子間におけると同一の親族関係を生する。

第729条〔姻族関係の終了〕

  姻族関係及び前条の親族関係は離婚によって、止む。
2 夫婦の一方か死亡したる場合において、生存配偶者か其家を去りたるとき、亦同し。

第730条〔養子の親族関係の終了〕

  養子と養親及び其血族との親族関係は離緣によって、止む。
2 養親か養家を去りたるときは、其者及び其実方の血族と養子との親族関係はこれによって、止む。
3 養子の配偶者、直系卑属又は其配偶者か養子の離緣によって、これと共に養家を去りたるときは、其者と養親及び其血族との親族関係はこれによって、止む。

第731条〔家の相続・分家〕

  第729条第二項及び前条第二項の規定は本家相続、分家及び廃絶家再興の場合にはこれを適用する。

第二章 戸主及び家族

第一節 総則

第732条〔戸主親族して其家在る者及び其配について〕

  戸主の親族であって其家に在る者及び其配偶者は、これを家族とする。
2 戸主の変更ありたる場合において、は、旧戸主及び其家族は新戸主の家族とする。

第733条〔子の家への入籍〕

  子は父の家に入る。
2 父の知れさる子は母の家に入る。
3 父母共に知れさる子は一家を創立する。

第734条〔出生前の離婚・離縁と子の入籍〕

  父か子の出生前に離婚又は離緣によって、其家を去りたるときは、前条第一項の規定は懷胎の始に遡りてこれを適用する。
2 前項の規定は父母か共に其家を去りたる場合にはこれを適用せず但、母か子の出生前に復籍を為したときは、此限に在らする。

第735条〔庶子・私生子の入籍〕

  家族の庶子及び私生子は戸主の同意あるでなければ其家に入ることができない。
2 庶子か父の家に入ることができるさるときは、母の家に入る。
3 私生子か母の家に入ることができるさるときは、一家を創立する。

第736条〔入夫婚姻〕

  女戸主か入夫婚姻を為したときは、入夫は其家の戸主と為る但、当事者か婚姻の当時反対の意思を表示したるときは、此限に在らする。

第737条〔戸主親族して他家在る者戸主同意について〕

  戸主の親族であって他家に在る者は、戸主の同意を得て其家族と為ることができる但、其者か他家の家族たるときは、其家の戸主の同意を得ることを要する。
2 前項に揭けたる者か未成年者なるときは、親権を行う父または母又は後見人の同意を得ることを要する。

第738条〔婚姻又養子緣組因りて他家入りたについて〕

  婚姻又は養子緣組によって、他家に入りたる者か其配偶者又は養親の親族に非さる自己の親族を婚家又は養家の家族と為さんと欲するときは、前条の規定による外其配偶者又は養親の同意を得ることを要する。
2 婚家又は養家を去りたる者か其家に在る自己の直系卑属を自家の家族と為さんと欲するとき、亦同し。

第739条〔復籍〕

  婚姻又は養子緣組によって、他家に入りたる者は、離婚又は離緣の場合において、実家に復籍する。

第740条〔復籍不能の場合、〕

  前条の規定によって、実家に復籍すべき者か実家の廃絶によって、復籍を為すこと能はさるときは、一家を創立する但、実家を再興することを妨けする。

第741条〔他家入籍の戸主の同意〕

  婚姻又は養子緣組によって、他家に入りたる者か更に婚姻又は養子緣組によって、他家に入らんと欲するときは、婚家又は養家及び実家の戸主の同意を得ることを要する。
2 前項の場合において、同意を為ささりし戸主は婚姻又は養子緣組の日より一年内に復籍を拒むことができる。

第742条〔復籍拒絶の場合、〕

  離籍せられたる家族は一家を創立する他家に入りたる後復籍を拒まれたる者か離婚又は離緣によって、其家を去りたるとき、亦同し。

第743条〔家族戸主同意あるき他家相続し、について〕

  家族は戸主の同意あるときは、他家を相続し、分家を爲し又は廃絶したる本家、分家、同家其他親族の家を再興することができる但、未成年者は、親権を行う父または母又は後見人の同意を得ることを要する。

第744条〔推定家督相続人の他家入籍制限〕

  法定の推定家督相続人は他家に入り又は一家を創立するることができない但、本家相続の必要あるときは、此限に在らする。
2 前項の規定は第750条第二項の適用を妨けする。

第745条〔妻の随従〕

  夫か他家に入り又は一家を創立したるときは、妻はこれに隨ひて其家に入る。

第二節 戸主及び家族の権利義務

第746条〔氏の称姓〕

  戸主及び家族は其家の氏を称する。

第747条〔扶養義務〕

  戸主は其家族に対して扶養の義務を負う。

第748条〔特有財産〕

  家族か自己の名において、得た財産は其特有財産とする。
2 戸主又は家族の孰れに属するか分明ならさる財産は戸主の財産と推定する。

第749条〔家族の居所〕

  家族は戸主の意に反して其居所を定めるることができない。
2 家族か前項の規定に違反して戸主の指定したる居所に在らさる間は戸主はこれに対して扶養の義務を免る。
3 前項の場合において、戸主は相当の期間を定め其指定したる場所に居所を轉すべき旨を催吿することができる若し家族か其催吿に応せさるときは、戸主はこれを離籍することができる但、其家族か未成年者なるときは、此限に在らする。

第750条〔家族の婚姻・養子縁組の戸主の同意〕

  家族か婚姻又は養子緣組を為すには戸主の同意を得ることを要する。
2 家族か前項の規定に違反して婚姻又は養子緣組を為したときは、戸主は其婚姻又は養子緣組の日より一年内に離籍を爲し又は復籍を拒むことができる。
3 家族か養子を為した場合において、前項の規定に從ひ離籍せられたるときは、其養子は養親に隨ひて其家に入る。

第751条〔戸主か其権利行うコ能さるき親族について〕

  戸主か其権利を行うこと能はさるときは、親族會これを行う但、戸主に対して親権を行う者又は其後見人あるときは、此限に在らする。

第三節 戸主権の喪失

第752条〔隠居の要件〕

  戸主は左に揭けたる条件の具備するでなければ隱居を為すことができない。
一 滿六十年以上なること。
二 完全の能力を有する家督相続人か相続の單純承認を為すこと。

第753条〔推定家督相続人の制限〕

  戸主か疾病、本家の相続又は再興其他已むことができるさる事由によって、爾後家政を執ること能はさるに至りたるときは、前条の規定に拘はらス裁判所の許可を得て隱居を為すことができる但、法定の推定家督相続人あらさるときは、豫め家督相続人たるへき者を定め其承認を得ることを要する。

第754条〔婚姻による隠居〕

  戸主か婚姻によって、他家に入らんと欲するときは、前条の規定に從ひ隱居を為すことができる。
2 戸主か隱居を爲さスして婚姻に因り他家に入らんと欲する場合において、戸籍吏か其届出を受理したるときは、其戸主は婚姻の日において、隱居を為したものとみなす。

第755条〔女戸主の隠居〕

  女戸主は年齡に拘はらス隱居を為すことができる。
2 有夫の女戸主か隱居を為すには其夫の同意を得ることを要する但、夫は正当の理由あるでなければ其同意を拒むことができない。

第756条〔無能力者の隠居〕

  無能力者か隱居を為すには其法定代理人の同意を得ることを要せする。

第757条〔隠居の届出〕

  隱居は隱居者及び其家督相続人よりこれを戸籍吏に届出つるによって、其效力を生する。

第758条〔隱居者親族及び検事隱居届出日よについて〕

  隱居者の親族及び検事は隱居届出の日より三个月内に第752条又は第753条の規定に違反したる隱居の取消を裁判所に請求することができる。
2 女戸主か第755条第二項の規定に違反して隱居を為したときは、夫は前項の期間内に其取消を裁判所に請求することができる。

第759条〔隠居の届出〕

  隱居者又は家督相続人か詐欺又は强迫によって、隱居の届出を為したときは、隱居者又は家督相続人は其詐欺を發見し又は强迫を免れたる時より一年内に隱居の取消を裁判所に請求することができる但、追認を為したときは、此限に在らする。
2 隱居者又は家督相続人か詐欺を發見せス又は强迫を免れさる間は其親族又は検事より隱居の取消を請求することができる但、其請求の後隱居者又は家督相続人か追認を為したときは、取消権はこれによって、消滅する。
3 前二項の取消権は隱居届出の日より十年を經過したるときは、時效によって、消滅する。

第760条〔隠居の取消〕

  隱居の取消前に家督相続人の債権者と爲りたる者は、其取消によって、戸主たる者に対して弁済の請求を為すことができる但、家督相続人に対する請求を妨けする。
2 債権者か債権取得の当時隱居取消の原因の存することを知りたるときは、家督相続人に対してのみ弁済の請求を為すことができる家督相続人か家督相続前より負擔せる債務及び其一身に專属する債務について亦同し。

第761条〔入夫婚姻による戸主権の喪失〕

  隱居又は入夫婚姻による戸主権の喪失は前戸主又は家督相続人より前戸主の債権者及び債務者に其通知を為すでなければこれを以て其債権者及び債務者に対抗することができない。

第762条〔新家立てたる者其家廃して他家入について〕

  新に家を立てたる者は、其家を廃して他家に入ることができる。
2 家督相続によって、戸主と爲りたる者は、其家を廃することができない但、本家の相続又は再興其他正当の事由に因り裁判所の許可を得たときは、此限に在らする。

第763条〔戸主か適法廃家して他家入りたるについて〕

  戸主か適法に廃家して他家に入りたるときは、其家族も亦其家に入る。

第764条〔推定家督相続人の他家入籍制限〕

  戸主を失ひたる家に家督相続人ないときは、絶家したるものとし其家族は各一家を創立する但、子は父に隨ひ又父か知れさるとき、他家に在るとき、または死亡したるときは、母に隨ひて其家に入る。
2 前項の規定は第745条の適用を妨けする。

第三章 婚姻

第一節 婚姻の成立

第一款 婚姻の要件

第765条〔婚姻適齢〕

  男は滿十七年女は滿十五年に至らされは婚姻を為すことができない。

第766条〔重婚の禁止〕

  配偶者ある者は、重ねて婚姻を為すことができない。

第767条〔女前婚解消又取消日より六个月經について〕

  女は前婚の解消又は取消の日より六个月を經過したる後でなければ再婚を為すことができない。
2 女か前婚の解消又は取消の前より懷胎したる場合において、は、其分娩の日より前項の規定を適用する。

第768条〔相姦者間の婚姻禁止〕

  姦通によって、離婚又は刑の宣吿を受けたる者は、相姦者と婚姻を為すことができない。

第769条〔近親婚の禁止〕

  直系血族又は三親等内の傍系血族の間において、は、婚姻を為すことができない但、養子と養方の傍系血族との間は此限に在らする。

第770条〔直系姻族間の婚姻禁止〕

  直系姻族の間において、は、婚姻を為すことができない第729条の規定に依り姻族関係か止みたる後亦同し。

第771条〔養子、其配偶者、直系卑属又其配について〕

  養子、其配偶者、直系卑属又は其配偶者と養親又は其直系尊属との間において、は、第730条の規定に依り親族関係か止みたる後であっても、婚姻を為すことができない。

第772条〔婚姻の同意〕

  子か婚姻を為すには其家に在る父母の同意を得ることを要する但、男か滿三十年女か滿二十五年に達したる後は此限に在らする。
2 父母の一方か知れさるとき、死亡したるとき、家を去りたるとき、又は其意思を表示すること能はさるときは、他の一方の同意のみを以て足る。
3 父母共に知れさるとき、死亡したるとき、家を去りたるとき、又は其意思を表示すること能はさるときは、未成年者は、其後見人及び親族會の同意を得ることを要する。

第773条〔継親子の親族関係〕

  継父母又は嫡母か子の婚姻に同意せさるときは、子は親族會の同意を得て婚姻を為すことができる。

第774条〔禁治産者の婚姻の同意〕

  禁治産者か婚姻を為すには其後見人の同意を得ることを要せする。

第775条〔婚姻の届出〕

  婚姻はこれを戸籍吏に届出つるによって、其效力を生する。
2 前項の届出は当事者雙方及び成年の証人二人以上より口頭にて又は署名したる書面を以てこれを為すことを要する。

第776条〔婚姻の届出の受理〕

  戸籍吏は婚姻か第741条第一項、第744条第一項、第750条第一項、第754条第一項、第765条乃至第773条及び前条第二項の規定其他の法令に違反せさることを認めたる後でなければ其届出を受理することができない但、婚姻か第741条第一項又は第750条第一項の規定に違反する場合において、戸籍吏か注意を為したに拘はらス当事者か其届出を為さんと欲するときは、此限に在らする。

第777条〔外国における婚姻の届出〕

  外国に在る日本人間において、婚姻を為さんと欲するときは、其国に駐在する日本の公使又は領事に其届出を為すことができる此場合において、は、前二条の規定を準用する。

第二款 婚姻の無效及び取消

第778条〔婚姻の無効〕

  婚姻は左の場合に限り無效とする。
一 人違其他の事由に因り当事者間に婚姻を為す意思ないとき、
二 当事者か婚姻の届出を爲ささるとき、但其届出か第775条第二項に揭けたる条件を缺クに止まるときは、婚姻はこれか爲めに其效力を妨けらるることなし。

第779条〔婚姻の取消〕

  婚姻は後七条の規定によるでなければこれを取消スことができない。

第780条〔第765条乃至第七百七十一について〕

  第765条乃至第771条の規定に違反したる婚姻は各当事者、其戸主、親族又は検事より其取消を裁判所に請求することができる但、検事は当事者の一方か死亡したる後はこれを請求することができない。

第766条〔婚姻取消の効果〕

  乃至第768条の規定に違反したる婚姻については当事者の配偶者又は前配偶者も亦其取消を請求することができる。

第781条〔不適齢者の婚姻取消〕

  第765条の規定に違反したる婚姻は不適齡者か適齡に達したるときは、其取消を請求することができない。
2 不適齡者は、適齡に達したる後尙ほ三个月間其婚姻の取消を請求することができる但、適齡に達したる後追認を為したときは、此限に在らする。

第782条〔再婚の禁止期間〕

  第767条の規定に違反したる婚姻は前婚の解消または取消の日より六个月を經過し又は女か再婚後懷胎したるときは、其取消を請求することができない。

第783条〔婚姻の同意〕

  第772条の規定に違反したる婚姻は同意を為す権利を有せし者より其取消を裁判所に請求することができる同意か詐欺又は强迫に因りたるとき、亦同し。

第784条〔前条の規定〕

  前条の取消権は左の場合において、消滅する。
一 同意を為す権利を有せし者か婚姻ありたることを知りたる後又は詐欺を發見しまたは强迫を免れたる後六个月を經過したるとき、
二 同意を為す権利を有せし者か追認を為したとき、
三 婚姻届出の日より二年を經過したるとき、

第785条〔詐欺・強迫による婚姻取消〕

  詐欺又は强迫によって、婚姻を為した者は、其婚姻の取消を裁判所に請求することができる。
2 前項の取消権は当事者か詐欺を發見しまたは强迫を免れたる後三个月を經過し又は追認を為したときは、消滅する。

第786条〔家族の婚姻・養子縁組〕

  壻養子緣組の場合において、は、各当事者は、緣組の無效又は取消を理由として婚姻の取消を裁判所に請求することができる但、緣組の無效又は取消の請求に附帶して婚姻の取消を請求することを妨けする。
2 前項の取消権は当事者か緣組の無效なること又は其取消ありたることを知りたる後三个月を經過し又は其取消権を抛棄したるときは、消滅する。

第787条〔婚姻取消の効果(財産関係)〕

  婚姻の取消は其效力を旣往に及ほさする。
2 婚姻の当時其取消の原因の存することを知らさりし当事者か婚姻によって、財産を得たときは、現に利益を受クる限度において、其返還を為すことを要する。
3 婚姻の当時其取消の原因の存することを知りたる当事者は、婚姻によって、得た利益の全部を返還することを要する尙ほ相手方か善意なりしときは、これに対して損害賠償の責に任する。

第二節 婚姻の效力

第788条〔規定〕

  妻は婚姻によって、夫の家に入る。
2 入夫及び壻養子は妻の家に入る。

第789条〔同居義務〕

  妻は夫と同居する義務を負う。
2 夫は妻をして同居を爲さしむることを要する。

第790条〔夫婦の扶養義務〕

  夫婦は互に扶養を為す義務を負う。

第791条〔夫の後見人職務〕

  妻か未成年者なるときは、成年の夫は其後見人の職務を行う。

第792条〔婚姻取消の効果(契約)〕

  夫婦間において、契約を為したときは、其契約は婚姻中何時にても夫婦の一方よりこれを取消スことができる但、第三者の権利を害することができない。

第三節 夫婦財産制

第一款 総則

第793条〔婚姻の届出前の財産契約〕

  夫婦か婚姻の届出前に其財産について別段の契約を為ささりしときは、其財産関係は次款に定めるる所による。

第794条〔婚姻の届出と財産制の登記〕

  夫婦か法定財産制に異なりたる契約を為したときは、婚姻の届出まてに其登記を為すでなければこれを以て夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。

第795条〔外国における婚姻〕

  外国人か夫の本国の法定財産制に異なりたる契約を為した場合において、婚姻の後日本の国籍を取得し又は日本に住所を定めたるときは、一年内に其契約を登記するでなければ日本において、は、これを以て夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。

第796条〔婚姻の届出後の財産関係変更〕

  夫婦の財産関係は婚姻届出の後はこれを変更することができない。
2 夫婦の一方か他の一方の財産を管理する場合において、管理の失当に因り其財産を危クしたるときは、他の一方は自ら其管理を為さんことを裁判所に請求することができる。
3 共有財産については前項の請求と共に其分割を請求することができる。

第797条〔夫婦間の契約〕

  前条の規定又は契約の結果に依り管理者を変更し又は共有財産の分割を為したときは、其登記を為すでなければこれを以て夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。

第二款 法定財産制

第798条〔夫婚姻より生ずるる一切費用負擔スについて〕

  夫は婚姻より生ずるる一切の費用を負擔ス但、妻か戸主たるときは、妻これを負擔する。
2 前項の規定は第790条及び第八章の規定の適用を妨けする。

第799条〔配偶者財産の使用収益〕

  夫又は女戸主は用方に從ひ其配偶者の財産の使用及び收益を為す権利を有する。
2 夫又は女戸主は其配偶者の財産の果実中より其債務の利息を払ふことを要する。

第8条〔第595条及び第五百九十八について〕

  第595条及び第598条の規定は前条の場合にこれを準用する。

第81条〔夫の妻の財産管理権〕

  夫は妻の財産を管理する。
2 夫か妻の財産を管理すること能はさるときは、妻自らこれを管理する。

第82条〔夫の妻の財産処分〕

  夫か妻の爲めに借財を爲し、妻の財産を讓渡し、これを擔保に供し又は第602条の期間を超えて其賃貸を為すには妻の承諾を得ることを要する但、管理の目的を以て果実を処分するは此限に在らする。

第83条〔夫の妻の財産管理の担保〕

  夫か妻の財産を管理する場合において、必要ありと認むるときは、裁判所は妻の請求に因り夫をして其財産の管理及び返還について相当の擔保を供せしむることができる。

第84条〔前条の規定〕

  日常の家事については妻は夫の代理人とみなす。
2 夫は前項の代理権の全部又は一部を否認することができる但、これを以て善意の第三者に対抗することができない。

第85条〔妻の財産管理の注意義務〕

  夫か妻の財産を管理し又は妻か夫の代理を為す場合において、は、自己の爲めにすると同一の注意を為すことを要する。

第86条〔妻の財産管理の準用規定〕

  第654条及び第655条の規定は夫か妻の財産を管理し又は妻か夫の代理を為す場合にこれを準用する。

第87条〔入夫婚姻〕

  妻又は入夫か婚姻前より有せる財産及び婚姻中自己の名において、得た財産は其特有財産とする。
2 夫婦の孰れに属するか分明ならさる財産は夫又は女戸主の財産と推定する。

第四節 離婚

第一款 協議上の離婚

第88条〔協議離婚〕

  夫婦は其協議を以て離婚を為すことができる。

第89条〔協議離婚の同意〕

  滿二十五年に達せさる者か協議上の離婚を為すには第772条及び第773条の規定に依り其婚姻について同意を為す権利を有する者の同意を得ることを要する。

第80条〔協議離婚〕

  第774条及び第775条の規定は協議上の離婚にこれを準用する。

第81条〔戸籍吏離婚か第775条第二について〕

  戸籍吏は離婚か第775条第二項及び第809条の規定其他の法令に違反せさることを認めたる後でなければ其届出を受理することができない。
2 戸籍吏か前項の規定に違反して届出を受理したるとき、であっても離婚はこれか爲めに其效力を妨けらるることなし。

第82条〔協議離婚〕

  協議上の離婚を為した者か其協議を以て子の監護を為すへき者を定めさりしときは、其監護は父に属する。
2 父か離婚によって、婚家を去りたる場合において、は、子の監護は母に属する。
3 前二項の規定は監護の範圍外において、父母の権利義務に変更を生ずるることなし。

第二款 裁判上の離婚

第83条〔裁判上の離婚〕

  夫婦の一方は左の場合に限り離婚の訴を提起することができる。
一 配偶者か重婚を為したとき、
二 妻か姦通を為したとき、
三 夫か姦淫罪によって、刑に処せられたるとき、
四 配偶者か僞造、賄賂、猥褻、竊盜、强盜、詐欺取財、受寄財物費消、贓物に関する罪または刑法第175条第260条に揭けたる罪によって、輕罪以上の刑に処せられ又は其他の罪によって、重禁錮三年以上の刑に処せられたるとき、
五 配偶者より同居に堪へさる虐待又は重大なる侮辱を受けたるとき、
六 配偶者より惡意を以て遺棄せられたるとき、
七 配偶者の直系尊属より虐待又は重大なる侮辱を受けたるとき、
八 配偶者か自己の直系尊属に対して虐待を爲し又はこれに重大なる侮辱を加へたるとき、
九 配偶者の生死か三年以上分明ならさるとき、
十 壻養子緣組の場合において、離緣ありたるとき、又は養子か家女と婚姻を為した場合において、離緣または緣組の取消ありたるとき、

第84条〔裁判上の離婚〕

  前条第一號乃至第四號の場合において、夫婦の一方か他の一方の行爲に同意したるときは、離婚の訴を提起することができない。
2 前条第一號乃至第七號の場合において、夫婦の一方か他の一方又は其直系尊属の行爲を宥恕したるとき、亦同し。

第85条〔裁判上の離婚〕

  第813条第四號に揭けたる処刑の宣吿を受けたる者は、其配偶者に同一の事由あることを理由として離婚の訴を提起することができない。

第86条〔裁判上の離婚〕

  第813条第一號乃至第八號の事由による離婚の訴はこれを提起する権利を有する者か離婚の原因たる事実を知りたる時より一年を經過したる後はこれを提起することができない其事実發生の時より十年を經過したる後亦同し。

第87条〔裁判上の離婚〕

  第813条第九號の事由による離婚の訴は配偶者の生死か分明と爲りたる後はこれを提起することができない。

第88条〔第813条第十號場合、於て離緣について〕

  第813条第十號の場合において、離緣又は緣組取消の請求ありたるときは、これに附帶して離婚の請求を為すことができる。

第83条〔裁判上の離婚〕

  第十號の事由による離婚の訴は当事者か離緣又は緣組の取消ありたることを知りたる後三个月を經過し又は離婚請求の権利を抛棄したるときは、これを提起することができない。

第89条〔子の監護〕

  第812条の規定は裁判上の離婚にこれを準用ス但、裁判所は子の利益の爲め其監護についてこれに異なりたる処分を命することができる。

第四章 親子

第一節 実子

第一款 嫡出子

第820条〔規定〕

  妻か婚姻中に懷胎したる子は夫の子と推定する。
2 婚姻成立の日より二百日後又は婚姻の解消または取消の日より三百日内に生れたる子は婚姻中に懷胎したるものと推定する。

第821条〔父の決定〕

  第767条第一項の規定に違反して再婚を為した女か分娩したる場合において、前条の規定に依り其子の父を定めるること能はさるときは、裁判所これを定める。

第822条〔嫡出否認〕

  第820条の場合において夫は子の嫡出なることを否認することができる。

第823条〔嫡出否認の訴え〕

  前条の否認権は子又は其法定代理人に対する訴によって、これを行う但、夫か子の法定代理人なるときは、裁判所は特別代理人を選任することを要する。

第824条〔嫡出否認権の喪失〕

  夫か子の出生後において、其嫡出なることを承認したるときは、其否認権を失う。

第825条〔嫡出否認の期間〕

  否認の訴は夫か子の出生を知りたる時より一年内にこれを提起することを要する。

第826条〔夫か未成年者なるき前条期間其成について〕

  夫か未成年者なるときは、前条の期間は其成年に達したる時よりこれを起算ス但、夫か成年に達したる後に子の出生を知りたるときは、此限に在らする。
2 夫か禁治産者なるときは、前条の期間は禁治産の取消ありたる後夫か子の出生を知りたる時よりこれを起算する。

第二款 庶子及び私生子

第827条〔庶子・私生子の入籍〕

  私生子は其父又は母において、これを認知することができる。
2 父か認知したる私生子はこれを庶子とする。

第828条〔庶子・私生子の入籍〕

  私生子の認知を為すには父又は母か無能力者なるとき、であっても其法定代理人の同意を得ることを要せする。

第829条〔私生子の認知と入籍〕

  私生子の認知は戸籍吏に届出つるによって、これを爲する。
2 認知は遺言によって、も亦これを為すことができる。

第830条〔成年私生子の認知〕

  成年の私生子は其承諾あるでなければこれを認知することができない。

第831条〔私生子の認知〕

  父は胎内に在る子であっても、これを認知することができる此場合において、は、母の承諾を得ることを要する。
2 父又は母は死亡したる子であっても、其直系卑属あるときに限りこれを認知することができる此場合において、其直系卑属か成年者なるときは、其承諾を得ることを要する。

第832条〔認知の効力〕

  認知は出生の時に遡りて其效力を生ずる但、第三者か旣に取得したる権利を害することができない。

第833条〔認知の取消禁止〕

  認知を為した父又は母は其認知を取消スことができない。

第834条〔認知への反対〕

  子其他の利害関係人は認知に対して反対の事実を主張することができる。

第835条〔認知の請求〕

  子、其直系卑属又は此等の者の法定代理人は父又は母に対して認知を求むることができる。

第836条〔庶子の嫡出子への転換〕

  庶子は其父母の婚姻によって、嫡出子たる身分を取得する。
2 婚姻中父母か認知したる私生子は其認知の時より嫡出子たる身分を取得する。
3 前二項の規定は子か旣に死亡したる場合にこれを準用する。

第二節 養子

第一款 緣組の要件

第837条〔養親の年齢〕

  成年に達したる者は、養子を為すことができる。

第838条〔養子の制限〕

  尊属又は年長者は、これを養子と為すことができない。

第839条〔推定家督相続人の制限〕

  法定の推定家督相続人たる男子ある者は、男子を養子と為すことができない但、女壻と為す爲めにする場合は、此限に在らする。

第840条〔後見人と養子〕

  後見人は被後見人を養子と為すことができない其任務か終了したる後未た管理の計算を終はらさる間亦同し。
2 前項の規定は第848条の場合にはこれを適用する。

第841条〔配偶者ある者其配偶者共する非さについて〕

  配偶者ある者は、其配偶者と共にするでなければ緣組を為すことができない。
2 夫婦の一方か他の一方の子を養子と為すには他の一方の同意を得るを以て足る。

第842条〔前条第一項場合、於て夫婦一方か其について〕

  前条第一項の場合において、夫婦の一方か其意思を表示すること能はさるときは、他の一方は雙方の名義を以て緣組を為すことができる。

第843条〔未成年者の縁組〕

  養子と為るへき者か十五年未滿なるときは、其家に在る父母これに代はりて緣組の承諾を為すことができる。
2 継父母又は嫡母か前項の承諾を為すには親族會の同意を得ることを要する。

第844条〔養子となる者の年齢〕

  成年の子か養子を爲し又は滿十五年以上の子か養子と為るには其家に在る父母の同意を得ることを要する。

第845条〔養子縁組の同意〕

  緣組又は婚姻によって、他家に入りたる者か更に養子として他家に入らんと欲するときは、実家に在る父母の同意を得ることを要する但、妻か夫に隨ひて他家に入るは此限に在らする。

第846条〔第772条第二項及び第三項について〕

  第772条第二項及び第三項の規定は前三条の場合にこれを準用する。

第773条〔準用規定〕

  の規定は前二条の場合にこれを準用する。

第847条〔第774条及び第七百七十五について〕

  第774条及び第775条の規定は緣組にこれを準用する。

第848条〔遺言による養子の年齢〕

  養子を為さんと欲する者は、遺言を以て其意思を表示することができる此場合において、は、遺言執行者、養子と為るへき者又は第843条の規定に依りこれに代はりて承諾を為した者及び成年の証人二人以上より遺言か效力を生したる後遲滯なク緣組の届出を為すことを要する。
2 前項の届出は養親の死亡の時に遡りて其效力を生する。

第849条〔戸籍吏緣組か第741条第一について〕

  戸籍吏は緣組か第741条第一項、第744条第一項、第750条第一項及び前十二条の規定其他の法令に違反せさることを認めたる後でなければ其届出を受理することができない。

第776条〔準用規定〕

  但書の規定は前項の場合にこれを準用する。

第850条〔外国在る日本人間於て緣組為さんについて〕

  外国に在る日本人間において、緣組を為さんと欲するときは、其国に駐在する日本の公使又は領事に其届出を為すことができる此場合において、は、第775条及び前二条の規定を準用する。

第二款 緣組の無效及び取消

第851条〔項の規定〕

  緣組は左の場合に限り無效とする。
一 人違其他の事由に因り当事者間に緣組を為す意思ないとき、
二 当事者か緣組の届出を爲ささるとき、但其届出か第775条第二項及び第848条第一項に揭けたる条件を缺クに止まるときは、緣組はこれか爲めに其效力を妨けらるることなし。

第852条〔緣組後七条規定依る非され之取消について〕

  緣組は後七条の規定によるでなければこれを取消スことができない。

第853条〔第837条規定違反したる緣について〕

  第837条の規定に違反したる緣組は養親又は其法定代理人より其取消を裁判所に請求することができる但、養親か成年に達したる後六个月を經過し又は追認を為したときは、此限に在らする。

第854条〔第838条又第839条について〕

  第838条又は第839条の規定に違反したる緣組は各当事者、其戸主又は親族より其取消を裁判所に請求することができる。

第855条〔第840条規定違反したる緣組について〕

  第840条の規定に違反したる緣組は養子又は其実方の親族より其取消を裁判所に請求することができる但、管理の計算か終はりたる後養子か追認を爲し又は六个月を經過したるときは、此限に在らする。
2 追認は養子か成年に達し又は能力を回復したる後これを為すでなければ其效なし。
3 養子か成年に達せス又は能力を回復せさる間に管理の計算か終はりたる場合において、は、第一項但、書の期間は養子か成年に達し又は能力を回復したる時よりこれを起算する。

第856条〔第841条規定違反したる緣について〕

  第841条の規定に違反したる緣組は同意を為ささりし配偶者より其取消を裁判所に請求することができる但、其配偶者か緣組ありたることを知りたる後六个月を經過したるときは、追認を為したものとみなす。

第857条〔第844条乃至第八百四十六について〕

  第844条乃至第846条の規定に違反したる緣組は同意を為す権利を有せし者より其取消を裁判所に請求することができる同意か詐欺又は强迫に因りたるとき、亦同し。

第784条〔準用規定〕

  の規定は前項の場合にこれを準用する。

第858条〔家族の婚姻・養子縁組〕

  壻養子緣組の場合において、は、各当事者は、婚姻の無效又は取消を理由として緣組の取消を裁判所に請求することができる但、婚姻の無效又は取消の請求に附帶して緣組の取消を請求することを妨けする。
2 前項の取消権は当事者か婚姻の無效なること又は其取消ありたることを知りたる後六个月を經過し又は其取消権を抛棄したるときは、消滅する。

第859条〔第785条及び第七百八十七について〕

  第785条及び第787条の規定は緣組にこれを準用ス但、第785条第二項の期間はこれを六个月とする。

第三款 緣組の效力

第860条〔養子の身分取得〕

  養子は緣組の日より養親の嫡出子たる身分を取得する。

第861条〔規定〕

  養子は緣組によって、養親の家に入る。

第四款 離緣

第862条〔緣組当事者其協議以て離緣為すコについて〕

  緣組の当事者は、其協議を以て離緣を為すことができる。
2 養子か十五年未滿なるときは、其離緣は養親と養子に代はりて緣組の承諾を為す権利を有する者との協議を以てこれを爲する。
3 養親か死亡したる後養子か離緣を為さんと欲するときは、戸主の同意を得てこれを為すことができる。

第863条〔滿二十五年達せさる者か協議上離について〕

  滿二十五年に達せさる者か協議上の離緣を為すには第844条の規定に依り其緣組について同意を為す権利を有する者の同意を得ることを要する。

第772条〔第二項、第三項及び第七百七十三について〕

  第二項、第三項及び第773条の規定は前項の場合にこれを準用する。

第864条〔第774条及び第七百七十五について〕

  第774条及び第775条の規定は協議上の離緣にこれを準用する。

第865条〔戸籍吏離緣か第775条第二について〕

  戸籍吏は離緣か第775条第二項、第862条及び第863条の規定其他の法令に違反せさることを認めたる後でなければ其届出を受理することができない。
2 戸籍吏か前項の規定に違反して届出を受理したるとき、であっても離緣はこれか爲めに其效力を妨けらるることなし。

第866条〔緣組当事者一方左場合、限り離緣訴について〕

  緣組の当事者の一方は左の場合に限り離緣の訴を提起することができる。
一 他の一方より虐待又は重大なる侮辱を受けたるとき、
二 他の一方より惡意を以て遺棄せられたるとき、
三 養親の直系尊属より虐待又は重大なる侮辱を受けたるとき、
四 他の一方か重禁錮一年以上の刑に処せられたるとき、
五 養子に家名を瀆し又は家産を傾クへき重大なる過失ありたるとき、
六 養子か逃亡して三年以上復帰せさるとき、
七 養子の生死か三年以上分明ならさるとき、
八 他の一方か自己の直系尊属に対して虐待を爲し又はこれに重大なる侮辱を加へたるとき、
九 壻養子緣組の場合において、離婚ありたるとき、又は養子か家女と婚姻を為した場合において、離婚または婚姻の取消ありたるとき、

第867条〔未成年者の離縁〕

  養子か滿十五年に達せさる間は其緣組について承諾権を有する者より離緣の訴を提起することができる。

第843条〔準用規定〕

  第二項の規定は前項の場合にこれを準用する。

第868条〔第866条第一號乃至第六號について〕

  第866条第一號乃至第六號の場合において、当事者の一方か他の一方又は其直系尊属の行爲を宥恕したるときは、離緣の訴を提起することができない。

第869条〔第866条第四號場合、於て当について〕

  第866条第四號の場合において、当事者の一方か他の一方の行爲に同意したるときは、離緣の訴を提起することができない。

第866条〔第四號揭けたる刑処せられたる者について〕

  第四號に揭けたる刑に処せられたる者は、他の一方に同一の事由あることを理由として離緣の訴を提起することができない。

第870条〔第866条第一號乃至第五號について〕

  第866条第一號乃至第五號及び第八號の事由による離緣の訴はこれを提起する権利を有する者か離緣の原因たる事実を知りたる時より一年を經過したる後はこれを提起することができない其事実發生の時より十年を經過したる後亦同し。

第871条〔逃亡による離縁〕

  第866条第六號の事由による離緣の訴は養親か養子の復帰したることを知りたる時より一年を經過したる後はこれを提起することができない其復帰の時より十年を經過したる後亦同し。

第872条〔生死不明による離縁〕

  第866条第七號の事由による離緣の訴は養子の生死か分明と爲りたる後はこれを提起することができない。

第873条〔婚姻取消の効果〕

  第866条第九號の場合において、離婚又は婚姻取消の請求ありたるときは、これに附帶して離緣の請求を為すことができる。

第866条〔婚姻取消の効果〕

  第九號の事由による離緣の訴は当事者か離婚又は婚姻の取消ありたることを知りたる後六个月を經過し又は離緣請求の権利を抛棄したるときは、これを提起することができない。

第874条〔養子か戸主爲りたる後離緣為すコについて〕

  養子か戸主と爲りたる後は離緣を為すことができない但、隱居を為した後は此限に在らする。

第875条〔養子の身分取得〕

  養子は離緣に因り其実家において、有せし身分を回復ス但、第三者か旣に取得したる権利を害することができない。

第876条〔養親子間の婚姻禁止〕

  夫婦か養子と爲り又は養子か養親の他の養子と婚姻を為した場合において、妻か離緣によって、養家を去るへきときは、夫は其選擇に從ひ離緣又は離婚を為すことを要する。

第五章 親権

第一節 総則

第877条〔親権の服従〕

  子は其家に在る父の親権に服する但、獨立の生計を立つる成年者は、此限に在らする。
2 父か知れさるとき、死亡したるとき、家を去りたるとき、又は親権を行うこと能はさるときは、家に在る母これを行う。

第878条〔継父、継母又嫡母か親権行う場合について〕

  継父、継母又は嫡母か親権を行う場合において、は、次章の規定を準用する。

第二節 親権の效力

第879条〔親権の内容〕

  親権を行う父又は母は未成年の子の監護及び敎育を為す権利を有し義務を負う。

第880条〔家族の居所〕

  未成年の子は親権を行う父又は母か指定したる場所に其居所を定めるることを要する但、第749条の適用を妨けする。

第881条〔兵役の許可〕

  未成年の子か兵役を出願するには親権を行う父又は母の許可を得ることを要する。

第882条〔懲戒〕

  親権を行う父又は母は必要なる範圍内において、自ら其子を懲戒し又は裁判所の許可を得てこれを懲戒場に入るることができる。
2 子を懲戒場に入るる期間は六个月以下の範圍内において、裁判所これを定める但、此期間は父又は母の請求に因り何時にてもこれを短縮することができる。

第883条〔職業の許可〕

  未成年の子は親権を行う父又は母の許可を得るでなければ職業を営むことができない。
2 父又は母は第6条第二項の場合において、は、前項の許可を取消し又はこれを制限することができる。

第884条〔親権者の子の財産管理〕

  親権を行う父又は母は未成年の子の財産を管理し又其財産に関する法律行爲について其子を代表ス但、其子の行爲を目的とする債務を生ずるへき場合において、は、本人の同意を得ることを要する。

第885条〔親権者の子の財産管理〕

  未成年の子か其配偶者の財産を管理すべき場合において、は、親権を行う父又は母これに代はりて其財産を管理する。

第886条〔親権行う母か未成年子代りて左揭について〕

  親権を行う母か未成年の子に代はりて左に揭けたる行爲を爲し又は子のこれを為すことに同意するには親族會の同意を得ることを要する。
一 営業を為すこと。
二 借財又は保証を為すこと。
三 不動産又は重要なる動産に関する権利の喪失を目的とする行爲を為すこと。
四 不動産又は重要なる動産に関する和解又は仲裁契約を為すこと。
五 相続を抛棄すること。
六 贈与又は遺贈を拒絶すること。

第887条〔親権行う母か前条規定違反して爲について〕

  親権を行う母か前条の規定に違反して爲し又は同意を与へたる行爲は子又は其法定代理人において、これを取消スことができる此場合において、は、第19条の規定を準用する。
2 前項の規定は第121条乃至第126条の適用を妨けする。

第888条〔親権行う父又母其未成年子利益相について〕

  親権を行う父又は母と其未成年の子と利益相反する行爲については父又は母は其子の爲めに特別代理人を選任することを親族會に請求することを要する。
2 父又は母か数人の子に対して親権を行う場合において、其一人と他の子との利益相反する行爲については其一方の爲め前項の規定を準用する。

第889条〔管理の注意義務〕

  親権を行う父又は母は自己の爲めにすると同一の注意を以て其管理権を行うことを要する。
2 母は親族會の同意を得て為した行爲についても其責を免るることができない但、母に過失なかりしときは、此限に在らする。

第890条〔婚姻費用の負担〕

  子か成年に達したるときは、親権を行ひたる父又は母は遲滯なク其管理の計算を為すことを要する但、其子の養育及び財産の管理の費用は其子の財産の收益とこれを相殺したるものとみなす。

第891条〔前条但、書規定無償て子財産与ふるについて〕

  前条但、書の規定は無償にて子に財産を与ふる第三者か反対の意思を表示したるときは、其財産についてはこれを適用する。

第892条〔第三者の財産管理〕

  無償にて子に財産を与ふる第三者か親権を行う父又は母をしてこれを管理せしめさる意思を表示したるときは、其財産は父又は母の管理に属せさるものとする。
2 前項の場合において、第三者か管理者を指定せさりしときは、裁判所は子、其親族又は検事の請求に因り其管理者を選任する。
3 第三者か管理者を指定せしとき、であっても其管理者の権限か消滅し又はこれを改任する必要ある場合において、第三者か更に管理者を指定せさるとき、亦同し。

第27条〔乃至第29条規定前二項場合、これについて〕

  乃至第29条の規定は前二項の場合にこれを準用する。

第893条〔妻の財産管理の準用規定〕

  第654条及び第655条の規定は父又は母か子の財産を管理する場合、及び前条の場合にこれを準用する。

第894条〔親権行ひたる父若ク母又親族會員について〕

  親権を行ひたる父または母又は親族會員と其子との間に財産の管理について生したる債権は其管理権消滅の時より五年間これを行はさるときは、時效によって、消滅する。
2 子か未た成年に達せさる間に管理権か消滅したるときは、前項の期間は其子か成年に達し又は後任の法定代理人か就職したる時よりこれを起算する。

第895条〔親権行う父又母其未成年子代りてについて〕

  親権を行う父又は母は其未成年の子に代はりて戸主権及び親権を行う。

第三節 親権の喪失

第896条〔父又母か親権濫用し又著しク不行について〕

  父又は母か親権を濫用し又は著しク不行跡なるときは、裁判所は子の親族又は検事の請求に因り其親権の喪失を宣吿することができる。

第897条〔親権行う父又母か管理失当因りてについて〕

  親権を行う父又は母か管理の失当によって、其子の財産を危クしたるときは、裁判所は子の親族又は検事の請求に因り其管理権の喪失を宣吿することができる。
2 父か前項の宣吿を受けたるときは、管理権は家に在る母これを行う。

第898条〔前二条定めたる原因か止みたるきについて〕

  前二条に定めたる原因か止みたるときは、裁判所は本人又は其親族の請求に因り失権の宣吿を取消スことができる。

第899条〔親権者の財産管理の辞任〕

  親権を行う母は財産の管理を辭することができる。

第六章 後見

第一節 後見の開始

第9条〔後見の開始〕

  後見は左の場合において、開始する。
一 未成年者に対して親権を行う者ないとき、又は親権を行う者か管理権を有せさるとき、
二 禁治産の宣吿ありたるとき、

第二節 後見の機関

第一款 後見人

第91条〔管理権の喪失〕

  未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言を以て後見人を指定することができる但、管理権を有せさる者は、此限に在らする。
2 親権を行う父の生前において、母か豫め財産の管理を辭したるときは、父は前項の規定によって、後見人の指定を為すことができる。

第92条〔親権行う父又母禁治産者後見人爲について〕

  親権を行う父又は母は禁治産者の後見人と為る。
2 妻か禁治産の宣吿を受けたるときは、夫其後見人と為る夫か後見人たらさるときは、前項の規定による。
3 夫か禁治産の宣吿を受けたるときは、妻其後見人と為る妻か後見人たらさるとき、又は夫か未成年者なるときは、第一項の規定による。

第93条〔戸主の後見人〕

  前二条の規定によって、家族の後見人たる者あらさるときは、戸主其後見人と為る。

第94条〔前三条規定依りて後見人たる者あについて〕

  前三条の規定によって、後見人たる者あらさるときは、後見人は親族會これを選任する。

第95条〔母か財産管理辭し、後見人か其任について〕

  母か財産の管理を辭し、後見人か其任務を辭し、親権を行ひたる父または母か家を去り又は戸主か隱居を為したに因り後見人を選任する必要を生したるときは、其父、母又は後見人は遲滯なク親族會を招集し又は其招集を裁判所に請求することを要する。

第96条〔後見人の人数〕

  後見人は一人たることを要する。

第97条〔後見人の辞任〕

  後見人は婦女を除ク外左の事由あるでなければ其任務を辭することができない。
一 軍人として現役に服するること。
二 被後見人の住所の市又は郡以外において、公務に從事すること。
三 自己より先に後見人たるへき者について本条又は次条に揭けたる事由の存せし場合において、其事由か消滅したること。
四 禁治産者については十年以上後見を為したこと但、配偶者、直系血族及び戸主は此限に在らする。
五 此他正当の事由。

第98条〔後見人の欠格事由〕

  左に揭けたる者は、後見人たることができない。
一 未成年者。
二 禁治産者及び準禁治産者。
三 剝奪公権者及び停止公権者。
四 裁判所において、免黜せられたる法定代理人又は保佐人。
五 破産者。
六 被後見人に対して訴訟を爲し又は為した者及び其配偶者並びに直系血族。
七 行方の知れさる者。
八 裁判所において、後見の任務に堪へさる事跡、不正の行爲又は著しき不行跡ありと認めたる者。

第99条〔準用規定〕

  前七条の規定は保佐人にこれを準用する。
2 保佐人又は其代表する者と準禁治産者との利益相反する行爲については保佐人は臨時保佐人の選任を親族會に請求することを要する。

第二款 後見監督人

第90条〔後見人の指定〕

  後見人を指定することができるる者は、遺言を以て後見監督人を指定することができる。

第91条〔前条規定依りて指定したる後見監について〕

  前条の規定によって、指定したる後見監督人ないときは、法定後見人又は指定後見人は其事務に著手する前親族會の招集を裁判所に請求し後見監督人を選任せしむることを要する若しこれに違反したるときは、親族會は其後見人を免黜することができる。
2 親族會において、後見人を選任したるときは、直ちに後見監督人を選任することを要する。

第92条〔後見人就職後後見監督人缺けたるについて〕

  後見人就職の後後見監督人の缺けたるときは、後見人は遲滯なク親族會を招集し後見監督人を選任せしむることを要する此場合において、は、前条第一項の規定を準用する。

第93条〔後見人更迭ありたるき親族會後見について〕

  後見人の更迭ありたるときは、親族會は後見監督人を改選することを要する但、前後見監督人を再選することを妨けする。
2 新後見人か親族會において、選任したる者に非さるときは、後見監督人は遲滯なク親族會を招集し前項の規定によって、改選を爲さしむることを要する若しこれに違反したるときは、後見人の行爲についてこれと連帶して其責に任する。

第94条〔後見人の欠格事由〕

  後見人の配偶者、直系血族又は兄弟姊妹は後見監督人たることができない。

第95条〔後見監督人の職務〕

  後見監督人の職務左の如し。
一 後見人の事務を監督すること。
二 後見人の缺けたる場合において、遲滯なク其後任者の任務に就クことを促し若し後任者ないときは、親族會を招集して其選任を爲さしむること。
三 急迫の事情ある場合において、必要なる処分を為すこと。
四 後見人又は其代表する者と被後見人との利益相反する行爲について被後見人を代表すること。

第96条〔第644条、第907条及びについて〕

  第644条、第907条及び第908条の規定は後見監督人にこれを準用する。

第三節 後見の事務

第97条〔後見人遲滯なク被後見人財産調査について〕

  後見人は遲滯なク被後見人の財産の調査に著手し一个月内に其調査を終はり且其目録を調製することを要する但、此期間は親族會において、これを伸長することができる。
2 財産の調査及び其目録の調製は後見監督人の立會を以てこれを為すでなければ其效なし。
3 後見人か前二項の規定に從ひ財産の目録を調製せさるときは、親族會はこれを免黜することができる。

第98条〔後見人の欠格事由〕

  後見人は目録の調製を終はるまては急迫の必要ある行爲のみを為す権限を有ス但、これを以て善意の第三者に対抗することができない。

第99条〔後見人か被後見人対し債権有し又について〕

  後見人か被後見人に対し債権を有し又は債務を負うときは、財産の調査に著手する前にこれを後見監督人に申出つることを要する。
2 後見人か被後見人に対し債権を有することを知りてこれを申出てさるときは、其債権を失う。
3 後見人か被後見人に対し債務を負うことを知りてこれを申出てさるときは、親族會は其後見人を免黜することができる。

第920条〔前三条規定後見人就職後被後見人について〕

  前三条の規定は後見人就職の後被後見人か包括財産を取得したる場合にこれを準用する。

第921条〔未成年者後見人第879条乃について〕

  未成年者の後見人は第879条乃至第883条及び第885条に定めたる事項について親権を行う父又は母と同一の権利義務を有ス但、親権を行う父又は母か定めたる敎育の方法及び居所を変更し、未成年者を懲戒場に入れ、営業を許可し、其許可を取消し又はこれを制限するには親族會の同意を得ることを要する。

第922条〔禁治産者の後見人〕

  禁治産者の後見人は禁治産者の資力に応して其療養看護を力むることを要する。
2 禁治産者を瘋癲病院に入れ又は私宅に監置すると否とは親族會の同意を得て後見人これを定める。

第923条〔後見人の被後見人の財産管理〕

  後見人は被後見人の財産を管理し又其財産に関する法律行爲について被後見人を代表する。

第884条〔準用規定〕

  但書の規定は前項の場合にこれを準用する。

第924条〔後見人其就職初於て親族會同意得について〕

  後見人は其就職の初において、親族會の同意を得て被後見人の生活、敎育又は療養看護及び財産の管理の爲め每年費すべき金額を豫定することを要する。
2 前項の豫定額は親族會の同意を得るでなければこれを変更することができない但、已むことができるさる場合において、豫定額を超ゆる金額を支出することを妨けする。

第925条〔親族會後見人及び被後見人資力其について〕

  親族會は後見人及び被後見人の資力其他の事情に依り被後見人の財産中より相当の報酬を後見人に与ふることができる但、後見人か被後見人の配偶者、直系血族又は戸主なるときは、此限に在らする。

第926条〔後見人親族會同意得て有給財産管について〕

  後見人は親族會の同意を得て有給の財産管理者を使用することができる但、第106条の適用を妨けする。

第927条〔親族會後見人就職初於て後見人かについて〕

  親族會は後見人就職の初において、後見人か被後見人の爲めに受取りたる金錢か何程の額に達せはこれを寄託すべきかを定めるることを要する。
2 後見人か被後見人の爲めに受取りたる金錢か親族會の定めたる額に達するも相当の期間内にこれを寄託せさるときは、其法定利息を払ふことを要する。
3 金錢を寄託すべき場所は親族會の同意を得て後見人これを定める。

第928条〔指定後見人及び選定後見人每年少について〕

  指定後見人及び選定後見人は每年少クとも一回被後見人の財産の狀況を親族會に報吿することを要する。

第929条〔後見人か被後見人代りて営業若クについて〕

  後見人か被後見人に代はりて営業または第12条第一項に揭けたる行爲を爲し又は未成年者のこれを為すことに同意するには親族會の同意を得ることを要する但、元本の領收については此限に在らする。

第930条〔後見人か被後見人財産又被後見人について〕

  後見人か被後見人の財産又は被後見人に対する第三者の権利を讓受けたるときは、被後見人はこれを取消スことができる此場合において、は、第19条の規定を準用する。
2 前項の規定は第121条乃至第126条の適用を妨けする。

第931条〔後見人親族會同意得る非され被後について〕

  後見人は親族會の同意を得るでなければ被後見人の財産を賃借することができない。

第932条〔後見人か其任務曠クするき親族會について〕

  後見人か其任務を曠クするときは、親族會は臨時管理人を選任し後見人の責任を以て被後見人の財産を管理せしむることができる。

第933条〔親族會後見人して被後見人財産管について〕

  親族會は後見人をして被後見人の財産の管理及び返還について相当の擔保を供せしむることができる。

第934条〔被後見人か戸主なるき後見人之代について〕

  被後見人か戸主なるときは、後見人はこれに代はりて其権利を行う但、家族を離籍し、其復籍を拒み又は家族か分家を爲しまたは廃絶家を再興することに同意するには親族會の同意を得ることを要する。
2 後見人は未成年者に代はりて親権を行う但、第917条乃至第921条及び前十条の規定を準用する。

第935条〔後見人の財産管理権限〕

  親権を行う者か管理権を有せさる場合において、は、後見人は財産に関する権限のみを有する。

第936条〔第644条、第887条について〕

  第644条、第887条、第889条第二項及び第892条の規定は後見にこれを準用する。

第四節 後見の終了

第937条〔後見人任務か終了したるき後見人について〕

  後見人の任務か終了したるときは、後見人又は其相続人は二个月内に其管理の計算を為すことを要する但、此期間は親族會において、これを伸長することができる。

第938条〔後見計算後見監督人立會以て之爲について〕

  後見の計算は後見監督人の立會を以てこれを爲する。
2 後見人の更迭ありたる場合において、は、後見の計算は親族會の認可を得ることを要する。

第939条〔夫婦間の契約〕

  未成年者か成年に達したる後後見の計算の終了前に其者と後見人又は其相続人との間に為した契約は其者において、これを取消スことができる其者か後見人又は其相続人に対して為した單獨行爲亦同し。

第9条〔及び第121条乃至第百二十六について〕

  及び第121条乃至第126条の規定は前項の場合にこれを準用する。

第940条〔後見の終了〕

  後見人か被後見人に返還すべき金額及び被後見人か後見人に返還すべき金額には後見の計算終了の時より利息を附することを要する。
2 後見人か自己の爲めに被後見人の金錢を消費したるときは、其消費の時よりこれに利息を附することを要する尙ほ損害ありたるときは、其賠償の責に任する。

第941条〔第654条及び第六百五十五について〕

  第654条及び第655条の規定は後見にこれを準用する。

第942条〔第894条定めたる時效後見について〕

  第894条に定めたる時效は後見人、後見監督人又は親族會員と被後見人との間において、後見に関して生したる債権にこれを準用する。
2 前項の時效は第939条の規定によって、法律行爲を取消したる場合において、は、其取消の時よりこれを起算する。

第943条〔前条第一項規定保佐人又親族會員について〕

  前条第一項の規定は保佐人又は親族會員と準禁治産者との間にこれを準用する。

第七章 親族會

第944条〔本法其他法令規定依り親族會開クについて〕

  本法其他の法令の規定に依り親族會を開クへき場合において、は、會議を要する事件の本人、戸主、親族、後見人、後見監督人、保佐人、検事又は利害関係人の請求に因り裁判所これを招集する。

第945条〔親族會員三人以上し親族其他本人について〕

  親族會員は三人以上とし親族其他本人又は其家に緣故ある者の中より裁判所これを選定する。
2 後見人を指定することができるる者は、遺言を以て親族會員を選定することができる。

第946条〔遠隔地居住する者其他正当事由あについて〕

  遠隔の地に居住する者其他正当の事由ある者は、親族會員たることを辭することができる。
2 後見人、後見監督人及び保佐人は親族會員たることができない。

第98条〔準用規定〕

  の規定は親族會員にこれを準用する。

第947条〔規定〕

  親族會の議事は會員の過半数を以てこれを決する。
2 會員は自己の利害に関する議事について表決の数に加はることができない。

第948条〔本人、戸主、家在る父母、配偶者について〕

  本人、戸主、家に在る父母、配偶者、本家並びに分家の戸主、後見人、後見監督人及び保佐人は親族會において、其意見を述ふることができる。
2 親族會の招集は前項に揭けたる者にこれを通知することを要する。

第949条〔無能力者爲め設けたる親族會其者について〕

  無能力者の爲めに設けたる親族會は其者の無能力の止むまて継續ス此親族會は最初の招集の場合、を除ク外本人、其法定代理人、後見監督人、保佐人又は會員これを招集する。

第950条〔親族會缺員生したるき會員補缺員について〕

  親族會に缺員を生したるときは、會員は補缺員の選定を裁判所に請求することを要する。

第951条〔親族會決議対して一个月内會員又について〕

  親族會の決議に対しては一个月内に會員又は第944条に揭けたる者より其不服を裁判所に訴ふることができる。

第952条〔親族會か決議為すコ能さるき會員について〕

  親族會か決議を為すこと能はさるときは、會員は其決議に代はるへき裁判を為すことを裁判所に請求することができる。

第953条〔第644条規定親族會員之準について〕

  第644条の規定は親族會員にこれを準用する。

第八章 扶養の義務

第954条〔夫婦の扶養義務〕

  直系血族及び兄弟姉妹は互に扶養を為す義務を負う。
2 夫婦の一方と他の一方の直系尊属であって其家に在る者との間亦同し。

第955条〔扶養義務〕

  扶養の義務を負う者数人ある場合において、は、其義務を履行すべき者の順序左の如し。
2 第一 配偶者。
3 第二 直系卑属。
4第三 直系尊属。
5第四 戸主。
6第五 前条第二項に揭けたる者。
7第六 兄弟姉妹。
8直系卑属又は直系尊属の間において、は、其親等の最も近き者を先にス前条第二項に揭けたる直系尊属間亦同し。

第956条〔夫婦の扶養義務〕

  同順位の扶養義務者数人あるときは、各其資力に応して其義務を分擔ス但、家に在る者と家に在らさる者との間において、は、家に在る者先つ扶養を為すことを要する。

第957条〔夫婦の扶養義務〕

  扶養を受クる権利を有する者数人ある場合において、扶養義務者の資力か其全員を扶養するに足らさるときは、扶養義務者は、左の順序に從ひ扶養を為すことを要する。
2 第一 直系尊属。
3 第二 直系卑属。
4第三 配偶者。
5第四 第954条第二項に揭けたる者。
6第五 兄弟姉妹。
7第六 前五號に揭けたる者に非さる家族。

第955条〔準用規定〕

  第二項の規定は前項の場合にこれを準用する。

第958条〔扶養権利者の順序〕

  同順位の扶養権利者数人あるときは、各其需要に応して扶養を受クることができる。

第956条〔準用規定〕

  但書の規定は前項の場合にこれを準用する。

第959条〔扶養義務〕

  扶養の義務は扶養を受クへき者か自己の資産又は勞務によって、生活を為すこと能はさるときにのみ存在ス自己の資産によって、敎育を受クること能はさるとき、亦同し。
2 兄弟姉妹間に在りては扶養の義務は扶養を受クる必要かこれを受クへき者の過失に因らスして生したるとき、にのみ存在ス但、扶養義務者か戸主なるときは、此限に在らする。

第960条〔夫婦の扶養義務〕

  扶養の程度は扶養権利者の需要と扶養義務者の身分及び資力とによって、これを定める。

第961条〔夫婦の扶養義務〕

  扶養義務者は、其選擇に從ひ扶養権利者を引取りてこれを養ひ又はこれを引取らスして生活の資料を給付することを要する但、正当の事由あるときは、裁判所は扶養権利者の請求に因り扶養の方法を定めるることができる。

第962条〔扶養の程度〕

  扶養の程度又は方法か判決によって、定まりたる場合において、其判決の根據と爲りたる事情に変更を生したるときは、当事者は、其判決の変更又は取消を請求することができる。

第963条〔扶養権利者の順序〕

  扶養を受クる権利はこれを処分することができない。

第五編 相続

第一章 家督相続

第一節 総則

第964条〔家督相続の開始事由〕

  家督相続は左の事由によって、開始する。
一 戸主の死亡、隱居又は国籍喪失。
二 戸主か婚姻又は養子緣組の取消によって、其家を去りたるとき、
三 女戸主の入夫婚姻又は入夫の離婚。

第965条〔相続開始の場所〕

  家督相続は被相続人の住所において、開始する。

第966条〔家督相続回復請求権〕

  家督相続回復の請求権は家督相続人又は其法定代理人か相続権侵害の事実を知りたる時より五年間これを行はさるときは、時效によって、消滅ス相続開始の時より二十年を經過したるとき、亦同し。

第967条〔相続財産の費用〕

  相続財産に関する費用は其財産中よりこれを支弁ス但、家督相続人の過失によるものは此限に在らする。
2 前項に揭けたる費用は遺留分権利者か贈与の減殺によって、得た財産を以てこれを支弁することを要せする。

第二節 家督相続人

第968条〔胎児の相続〕

  胎兒は家督相続については旣に生まれたるものとみなす。
2 前項の規定は胎兒か死体にて生まれたるときは、これを適用する。

第969条〔家督相続人の欠格〕

  左に揭けたる者は、家督相続人たることができない。
一 故意に被相続人又は家督相続について先順位に在る者を死に致し又は死に致さんとしたる爲め刑に処せられたる者。
二 被相続人の殺害せられたることを知りてこれを吿發又は吿訴せさりし者但、其者に是非の弁別ないとき、又は殺害者か自己の配偶者または直系血族なりしときは、此限に在らする。
三 詐欺又は强迫に因り被相続人か相続に関する遺言を爲し、これを取消し又はこれを変更することを妨けたる者。
四 詐欺又は强迫に因り被相続人をして相続に関する遺言を爲さしめ、これを取消さしめ又はこれを変更せしめたる者。
五 相続に関する被相続人の遺言書を僞造、変造、毀滅又は藏匿したる者。

第970条〔家督相続人の順序〕

  被相続人の家族たる直系卑属は左の規定に從ひ家督相続人と為る。
一 親等の異なりたる者の間に在りては其近き者を先にする。
二 親等の同しき者の間に在りては男を先にする。
三 親等の同しき男又は女の間に在りては嫡出子を先にする。
四 親等の同しき嫡出子、庶子及び私生子の間に在りては嫡出子及び庶子は女であっても、これを私生子より先にする。
五 前四號に揭けたる事項について相同しき者の間に在りては年長者を先にする。

第836条〔養子の身分取得〕

  の規定に依り又は養子緣組によって、嫡出子たる身分を取得したる者は、家督相続については其嫡出子たる身分を取得したる時に生まれたるものとみなす。

第971条〔前条の規定〕

  前条の規定は第736条の適用を妨けする。

第972条〔庶子・私生子の家督相続〕

  第737条及び第738条の規定によって、家族と爲りたる直系卑属は嫡出子又は庶子たる他の直系卑属ない場合に限り第970条に定めたる順序に從ひて家督相続人と為る。

第973条〔推定家督相続人の制限〕

  法定の推定家督相続人は其姊妹の爲めにする養子緣組によって、其相続権を害せらるることなし。

第974条〔家督相続人の順序〕

  第970条及び第972条の規定によって、家督相続人たるへき者か家督相続の開始前に死亡し又は其相続権を失ひたる場合において、其者に直系卑属あるときは、其直系卑属は第970条及び第972条に定めたる順序に從ひ其者と同順位において、家督相続人と為る。

第975条〔推定家督相続人の廃除〕

  法定の推定家督相続人について左の事由あるときは、被相続人は其推定家督相続人の廃除を裁判所に請求することができる。
一 被相続人に対して虐待を爲し又はこれに重大なる侮辱を加へたること。
二 疾病其他身体又は精神の狀況に因り家政を執るに堪へさるへきこと。
三 家名に汚辱を及ほすべき罪によって、刑に処せられたること。
四 浪費者として準禁治産の宣吿を受け改悛の望ないこと。
2 此他正当の事由あるときは、被相続人は親族會の同意を得て其廃除を請求することができる。

第976条〔遺言による推定家督相続人の廃除〕

  被相続人か遺言を以て推定家督相続人を廃除する意思を表示したるときは、遺言執行者は、其遺言か效力を生したる後遲滯なク裁判所に廃除の請求を為すことを要する此場合において、廃除は被相続人の死亡の時に遡りて其效力を生する。

第977条〔推定家督相続人廃除の取消〕

  推定家督相続人廃除の原因止みたるときは、被相続人又は推定家督相続人は廃除の取消を裁判所に請求することができる。

第975条〔推定相続人の廃除〕

  第一項第一號の場合において、は、被相続人は何時にても廃除の取消を請求することができる。
2 前二項の規定は相続開始の後はこれを適用する。
3 前条の規定は廃除の取消にこれを準用する。

第978条〔推定家督相続人廃除又其取消請求について〕

  推定家督相続人の廃除又は其取消の請求ありたる後其裁判確定前に相続か開始したるときは、裁判所は親族、利害関係人又は検事の請求に因り戸主権の行使及び遺産の管理について必要なる処分を命することができる廃除の遺言ありたるとき、亦同し。
2 裁判所か管理人を選任したる場合において、は、第27条乃至第29条の規定を準用する。

第979条〔家督相続人の指定〕

  法定の推定家督相続人ないときは、被相続人は家督相続人を指定することができる此指定は法定の推定家督相続人あるに至りたるときは、其效力を失う。
2 家督相続人の指定はこれを取消スことができる。
3 前二項の規定は死亡又は隱居による家督相続の場合にのみこれを適用する。

第980条〔家督相続人指定の届出〕

  家督相続人の指定及び其取消はこれを戸籍吏に届出つるによって、其效力を生する。

第981条〔遺言による家督相続人の指定〕

  被相続人か遺言を以て家督相続人の指定又は其取消を為す意思を表示したるときは、遺言執行者は、其遺言か效力を生したる後遲滯なクこれを戸籍吏に届出つることを要する此場合において、指定又は其取消は被相続人の死亡の時に遡りて其效力を生する。

第982条〔法定又指定家督相続人ない場合、於について〕

  法定又は指定の家督相続人ない場合において、其家に被相続人の父あるときは、父、父あらさるとき、又は父か其意思を表示すること能はさるときは、母、父母共にあらさるとき、又は其意思を表示すること能はさるときは、親族會は左の順序に從ひ家族中より家督相続人を選定する。
2 第一 配偶者但、家女なるとき、
3 第二 兄弟。
4第三 姊妹。
5第四 第一號に該当せさる配偶者。
6第五 兄弟姊妹の直系卑属。

第983条〔家督相続人の選定〕

  家督相続人を選定すべき者は、正当の事由ある場合に限り裁判所の許可を得て前条に揭けたる順序を変更し又は選定を爲ささることができる。

第984条〔家督相続人の順序〕

  第982条の規定によって、家督相続人たる者ないときは、家に在る直系尊属中親等の最も近き者家督相続人と為る但、親等の同しき者の間に在りては男を先にする。

第985条〔前条規定依りて家督相続人たる者について〕

  前条の規定によって、家督相続人たる者ないときは、親族會は被相続人の親族、家族、分家の戸主又は本家または分家の家族中より家督相続人を選定する。
2 前項に揭けたる者の中に家督相続人たるへき者ないときは、親族會は他人の中よりこれを選定する。
3 親族會は正当の事由ある場合に限り前二項の規定に拘はらス裁判所の許可を得て他人を選定することができる。

第三節 家督相続の效力

第986条〔家督相続の効力〕

  家督相続人は相続開始の時より前戸主の有せし権利義務を承継ス但、前戸主の一身に專属せるものは此限に在らする。

第987条〔家督相続の特権〕

  系譜、祭具及び墳墓の所有権は家督相続の特権に属する。

第988条〔入夫婚姻による財産留保〕

  隱居者及び入夫婚姻を為す女戸主は確定日附ある証書によって、其財産を留保することができる但、家督相続人の遺留分に関する規定に違反することができない。

第989条〔入夫婚姻による債権債務〕

  隱居又は入夫婚姻による家督相続の場合において、は、前戸主の債権者は、其前戸主に対して弁済の請求を為すことができる。
2 入夫婚姻の取消又は入夫の離婚による家督相続の場合において、は、入夫か戸主たりし間に負擔したる債務の弁済は其入夫に対してこれを請求することができる。
3 前二項の規定は家督相続人に対する請求を妨けする。

第990条〔国籍喪失による家督相続〕

  国籍喪失者の家督相続人は戸主権及び家督相続の特権に属する権利のみを承継ス但、遺留分及び前戸主か特に指定したる相続財産を承継することを妨けする。
2 国籍喪失者か日本人でなければ享有することができるさる権利を有する場合において、一年内にこれを日本人に讓渡ささるときは、其権利は家督相続人に帰属する。

第991条〔隠居取消と債権者〕

  国籍喪失による家督相続の場合において、は、前戸主の債権者は、家督相続人に対しては其受けたる財産の限度において、のみ弁済の請求を為すことができる。

第二章 遺産相続

第一節 総則

第992条〔規定〕

  遺産相続は家族の死亡によって、開始する。

第993条〔遺産相続の準用規定〕

  第965条乃至第968条の規定は遺産相続にこれを準用する。

第二節 遺産相続人

第994条〔遺産相続人〕

  被相続人の直系卑属は左の規定に從ひ遺産相続人と為る。
一 親等の異なりたる者の間に在りては其近き者を先にする。
二 親等の同しき者は、同順位において、遺産相続人と為る。

第995条〔前条規定依りて遺産相続人たるへについて〕

  前条の規定によって、遺産相続人たるへき者か相続の開始前に死亡し又は其相続権を失ひたる場合において、其者に直系卑属あるときは、其直系卑属は前条の規定に從ひ其者と同順位において、遺産相続人と為る。

第996条〔遺産相続の開始〕

  前二条の規定によって、遺産相続人たるへき者ない場合において、遺産相続を為すへき者の順位左の如し。
2 第一 配偶者。
3 第二 直系尊属。
4第三 戸主。
5前項第二號の場合において、は、第994条の規定を準用する。

第997条〔遺産相続人の欠格事由〕

  左に揭けたる者は、遺産相続人たることができない。
一 故意に被相続人又は遺産相続について先順位または同順位に在る者を死に致し又は死に致さんとしたる爲め刑に処せられたる者。
二 第969条第二號乃至第五號に揭けたる者。

第998条〔推定遺産相続人の廃除〕

  遺留分を有する推定遺産相続人か被相続人に対して虐待を爲し又はこれに重大なる侮辱を加へたるときは、被相続人は其推定遺産相続人の廃除を裁判所に請求することができる。

第999条〔推定遺産相続人の廃除〕

  被相続人は何時にても推定遺産相続人廃除の取消を裁判所に請求することができる。

第1000条〔推定遺産相続人の廃除〕

  第976条及び第978条の規定は推定遺産相続人の廃除及び其取消にこれを準用する。

第三節 遺産相続の效力

第一款 総則

第1001条〔遺産相続人相続開始時より被相続について〕

  遺産相続人は相続開始の時より被相続人の財産に属せし一切の権利義務を承継ス但、被相続人の一身に專属せしものは此限に在らする。

第1002条〔遺産相続人数人あるき相続財産其について〕

  遺産相続人数人あるときは、相続財産は其共有に属する。

第1003条〔相続の効力〕

  各共同相続人は其相続分に応して被相続人の権利義務を承継する。

第二款 相続分

第1004条〔庶子・私生子の相続分〕

  同順位の相続人数人あるときは、其各自の相続分は相均しきものとス但、直系卑属数人あるときは、庶子及び私生子の相続分は嫡出子の相続分の二分の一とする。

第1005条〔家督相続人の相続分〕

  第995条の規定によって、相続人たる直系卑属の相続分は其直系尊属か受クへかりしものに同し但、直系卑属数人あるときは、其各自の直系尊属か受クへかりし部分について前条の規定に從ひて其相続分を定める。

第1006条〔相続人の欠格事由〕

  被相続人は前二条の規定に拘はらス遺言を以て共同相続人の相続分を定め又はこれを定めるることを第三者に委託することができる但、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。
2 被相続人か共同相続人中の一人または数人の相続分のみを定め又はこれを定めしめたるときは、他の共同相続人の相続分は前二条の規定によって、これを定める。

第1007条〔家の相続・分家〕

  共同相続人中被相続人より遺贈を受け又は婚姻、養子緣組、分家、廃絶家再興の爲めまたは生計の資本として贈与を受けたる者あるときは、被相続人か相続開始の時において、有せし財産の價額に其贈与の價額を加へたるものを相続財産と看做し前三条の規定によって、算定したる相続分の中より其遺贈又は贈与の價額を控除し其殘額を以て其者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の價額か相続分の價額に等しク又はこれに超ゆるときは、受遺者又は受贈者は、其相続分を受クることができない。
3 被相続人か前二項の規定に異なりたる意思を表示したるときは、其意思表示は遺留分に関する規定に反せさる範圍内において、其效力を有する。

第1008条〔前条揭けたる贈与價額受贈者行爲について〕

  前条に揭けたる贈与の價額は受贈者の行爲に因り其目的たる財産か滅失し又は其價格の增減ありたるとき、であっても相続開始の当時仍ほ原狀にて存するものと看做してこれを定める。

第1009条〔相続分〕

  共同相続人の一人か分割前に其相続分を第三者に讓渡したるときは、他の共同相続人は其價額及び費用を償還して其相続分を讓受クることができる。
2 前項に定めたる権利は一个月内にこれを行使することを要する。

第三款 遺産の分割

第1000条〔遺産の分割〕

  被相続人は遺言を以て分割の方法を定め又はこれを定めるることを第三者に委託することができる。

第1001条〔被相続人遺言以て相続開始時よりについて〕

  被相続人は遺言を以て相続開始の時より五年を超えさる期間内分割を禁することができる。

第1002条〔遺産分割相続開始時遡りて其效力について〕

  遺産の分割は相続開始の時に遡りて其效力を生する。

第1003条〔家督相続の開始事由〕

  各共同相続人は相続開始前より存する事由について他の共同相続人に対し賣主と同しク其相続分に応して擔保の責に任する。

第1004条〔相続と債権〕

  各共同相続人は其相続分に応し他の共同相続人か分割によって、受けたる債権について分割の当時における債務者の資力を擔保する。
2 弁済期に在らさる債権及び停止条件附債権については各共同相続人は弁済を為すへき時における債務者の資力を擔保する。

第1005条〔相続人の欠格事由〕

  擔保の責に任する共同相続人中償還を為す資力ない者あるときは、其償還すること能はさる部分は求償者及び他の資力ある者各其相続分に応してこれを分擔ス但、求償者に過失あるときは、他の共同相続人に対して分擔を請求することができない。

第1006条〔前三条規定被相続人か遺言以て別について〕

  前三条の規定は被相続人か遺言を以て別段の意思を表示したるときは、これを適用する。

第三章 相続の承認及び抛棄

第一節 総則

第1007条〔相続人自己爲め相続開始ありたるについて〕

  相続人は自己の爲めに相続の開始ありたることを知りたる時より三个月内に單純または限定の承認又は抛棄を為すことを要する但、此期間は利害関係人又は検事の請求に因り裁判所において、これを伸長することができる。
2 相続人は承認又は抛棄を為す前に相続財産の調査を為すことができる。

第1008条〔相続人か承認又抛棄爲さスして死について〕

  相続人か承認又は抛棄を爲さスして死亡したるときは、前条第一項の期間は其者の相続人か自己の爲めに相続の開始ありたることを知りたる時よりこれを起算する。

第1009条〔相続人か無能力者なるき第千十七について〕

  相続人か無能力者なるときは、第1017条第一項の期間は其法定代理人か無能力者の爲めに相続の開始ありたることを知りたる時よりこれを起算する。

第1020条〔法定家督相続人の相続放棄〕

  法定家督相続人は抛棄を為すことができない但、第984条に揭けたる者は、此限に在らする。

第1021条〔相続人の相続財産管理〕

  相続人は其固有財産におけると同一の注意を以て相続財産を管理することを要する但、承認又は抛棄を為したときは、此限に在らする。
2 裁判所は利害関係人又は検事の請求に因り何時にても相続財産の保存に必要なる処分を命することができる。
3 裁判所か管理人を選任したる場合において、は、第27条乃至第29条の規定を準用する。

第1022条〔承認及び抛棄第1017条第一項期について〕

  承認及び抛棄は第1017条第一項の期間内であっても、これを取消スことができない。
2 前項の規定は第一編及び前編の規定によって、承認又は抛棄の取消を為すことを妨けス但、其取消権は追認を為すことができるる時より六个月間これを行はさるときは、時效によって、消滅ス承認又は抛棄の時より十年を經過したるとき、亦同し。

第二節 承認

第一款 單純承認

第1023条〔単純承認の効力〕

  相続人か單純承認を為したときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。

第1024条〔単純承認〕

  左に揭けたる場合において、は、相続人は單純承認を為したものとみなす。
一 相続人か相続財産の全部又は一部を処分したるとき、但保存行爲及び第602条に定めたる期間を超えさる賃貸を為すは此限に在らする。
二 相続人か第1017条第一項の期間内に限定承認又は抛棄を為ささりしとき、
三 相続人か限定承認又は抛棄を為した後であっても、相続財産の全部または一部を隱匿し、私にこれを消費し又は惡意を以てこれを財産目録中に記載せさりしとき、但其相続人か抛棄を為したによって、相続人と爲りたる者か承認を為した後は此限に在らする。

第二款 限定承認

第1025条〔相続人相続因りて得た財産限度について〕

  相続人は相続によって、得た財産の限度において、のみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して承認を為すことができる。

第1026条〔相続人か限定承認為さん欲するきについて〕

  相続人か限定承認を為さんと欲するときは、第1017条第一項の期間内に財産目録を調製してこれを裁判所に提出し限定承認を為す旨を申述することを要する。

第1027条〔単純承認の擬制〕

  相続人か限定承認を為したときは、其被相続人に対して有せし権利義務は消滅せさりしものとみなす。

第1028条〔限定承認者の財産管理〕

  限定承認者は、其固有財産におけると同一の注意を以て相続財産の管理を継續することを要する。

第645条〔、第646条、第650条について〕

  、第646条、第650条第一項、第二項及び第1021条第二項、第三項の規定は前項の場合にこれを準用する。

第1029条〔相続と債権〕

  限定承認者は、限定承認を為した後五日内に一切の相続債権者及び受遺者に対し限定承認を為したこと及び一定の期間内に其請求の申出を為すへき旨を公吿することを要する但、其期間は二个月を下ることができない。

第79条〔第二項及び第三項規定前項場合、これについて〕

  第二項及び第三項の規定は前項の場合にこれを準用する。

第1030条〔相続と債権〕

  限定承認者は、前条第一項の期間滿了前には相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。

第1031条〔第1029条第一項期間滿了後限について〕

  第1029条第一項の期間滿了の後は限定承認者は、相続財産を以て其期間内に申出てたる債権者其他知れたる債権者に各其債権額の割合に応して弁済を為すことを要する但、優先権を有する債権者の権利を害することができない。

第1032条〔限定承認者弁済期至らさる債権雖について〕

  限定承認者は、弁済期に至らさる債権であっても、前条の規定によって、これを弁済することを要する。
2 条件附債権又は存續期間の不確定なる債権は裁判所において、選任したる鑑定人の評價に從ひてこれを弁済することを要する。

第1033条〔限定承認者前二条規定依りて各債について〕

  限定承認者は、前二条の規定によって、各債権者に弁済を為した後でなければ受遺者に弁済を為すことができない。

第1034条〔前三条規定從ひて弁済為す付き相について〕

  前三条の規定に從ひて弁済を為すについて相続財産の賣却を必要とするときは、限定承認者は、これを競賣に付することを要する但、裁判所において、選任したる鑑定人の評價に從ひ相続財産の全部又は一部の價額を弁済して其競賣を止むることができる。

第1035条〔婚姻費用の負担〕

  相続債権者及び受遺者は、自己の費用を以て相続財産の競賣又は鑑定に參加することができる此場合において、は、第260条第二項の規定を準用する。

第1036条〔限定承認者か第1029条定めたについて〕

  限定承認者か第1029条に定めたる公吿または催吿を為すことを怠り又は同条第一項の期間内に或債権者または受遺者に弁済を為したに因り他の債権者または受遺者に弁済を為すこと能はさるに至りたるときは、これによって、生したる損害を賠償する責に任ス第1030条乃至第1033条の規定に違反して弁済を為したとき、亦同し。
2 前項の規定は情を知りて不当に弁済を受けたる債権者又は受遺者に対する他の債権者又は受遺者の求償を妨けする。

第724条〔規定〕

  の規定は前二項の場合にも亦これを適用する。

第1037条〔管理の担保〕

  第1029条第一項の期間内に申出てさりし債権者及び受遺者であって限定承認者に知れさりし者は、殘餘財産についてのみ其権利を行うことができる但、相続財産について特別擔保を有する者は、此限に在らする。

第三節 抛棄

第1038条〔相続の放棄〕

  相続の抛棄を為さんと欲する者は、其旨を裁判所に申述することを要する。

第1039条〔規定〕

  抛棄は相続開始の時に遡りて其效力を生する。
2 数人の遺産相続人ある場合において、其一人か抛棄を為したときは、其相続分は他の相続人の相続分に応してこれに帰属する。

第1040条〔相続人の相続財産管理〕

  相続の抛棄を為した者は、其抛棄によって、相続人と爲りたる者か相続財産の管理を始むることができるるまて自己の財産におけると同一の注意を以て其財産の管理を継續することを要する。

第645条〔、第646条、第650条について〕

  、第646条、第650条第一項、第二項及び第1021条第二項、第三項の規定は前項の場合にこれを準用する。

第四章 財産の分離

第1041条〔相続債権者又受遺者相続開始時よについて〕

  相続債権者又は受遺者は、相続開始の時より三个月内に相続人の財産中より相続財産を分離せんことを裁判所に請求することができる其期間滿了の後であっても、相続財産か相続人の固有財産と混合せさる間亦同し。
2 裁判所か前項の請求によって、財産の分離を命したるときは、其請求を為した者は、五日内に他の相続債権者及び受遺者に対し財産分離の命令ありたること及び一定の期間内に配当加入の申出を為すへき旨を公吿することを要する但、其期間は二个月を下ることができない。

第1042条〔財産分離請求為した者及び前条について〕

  財産分離の請求を為した者及び前条第二項の規定によって、配当加入の申出を為した者は、相続財産について相続人の債権者に先ちて弁済を受ク。

第1043条〔財産分離の管理〕

  財産分離の請求ありたるときは、裁判所は相続財産の管理について必要なる処分を命することができる。
2 裁判所か管理人を選任したる場合において、は、第27条乃至第29条の規定を準用する。

第1044条〔相続人の相続財産管理〕

  相続人は單純承認を為した後であっても、財産分離の請求ありたるときは、爾後其固有財産におけると同一の注意を以て相続財産の管理を為すことを要する但、裁判所において、管理人を選任したるときは、此限に在らする。

第645条〔乃至第647条及び第六百五について〕

  乃至第647条及び第650条第一項、第二項の規定は前項の場合にこれを準用する。

第1045条〔財産制の登記〕

  財産の分離は不動産については其登記を為すでなければこれを以て第三者に対抗することができない。

第1046条〔第304条規定財産分離場合、之準について〕

  第304条の規定は財産分離の場合にこれを準用する。

第1047条〔相続と債権〕

  相続人は第1041条第一項及び第二項の期間滿了前には相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。
2 財産分離の請求ありたるときは、相続人は第1041条第二項の期間滿了の後相続財産を以て財産分離の請求又は配当加入の申出を為した債権者及び受遺者に各其債権の割合に応して弁済を為すことを要する但、優先権を有する債権者の権利を害することができない。

第1032条〔乃至第1036条規定前項場合、これについて〕

  乃至第1036条の規定は前項の場合にこれを準用する。

第1048条〔財産分離請求為した者及び配当について〕

  財産分離の請求を為した者及び配当加入の申出を為した者は、相続財産を以て全部の弁済を受クること能はさりし場合に限り相続人の固有財産について其権利を行うことができる此場合において、は、相続人の債権者は、其者に先ちて弁済を受クることができる。

第1049条〔管理の担保〕

  相続人は其固有財産を以て相続債権者または受遺者に弁済を爲し又はこれに相当の擔保を供して財産分離の請求を防止し又は其效力を消滅せしむることができる但、相続人の債権者かこれによって、損害を受クへきことを証明して異議を述へたるときは、此限に在らする。

第1050条〔相続人か限定承認為すコ得る間又について〕

  相続人か限定承認を為すことができるる間又は相続財産か相続人の固有財産と混合せさる間は其債権者は、財産分離の請求を為すことができる。

第34条〔、第1027条、第1029条乃について〕

  、第1027条、第1029条乃至第1036条、第1043条乃至第1045条及び第1048条の規定は前項の場合にこれを準用ス但、第1029条に定めたる公吿及び催吿は財産分離の請求を為した債権者これを為すことを要する。

第五章 相続人の曠缺

第1051条〔相続人あるコ分明ならさるき相続について〕

  相続人あること分明ならさるときは、相続財産はこれを法人とする。

第1052条〔相続財産管理人の選任〕

  前条の場合において、は、裁判所は利害関係人又は検事の請求に因り相続財産の管理人を選任することを要する。
2 裁判所は遲滯なク管理人の選任を公吿することを要する。

第1053条〔相続財産管理人の準用規定〕

  第27条乃至第29条の規定は相続財産の管理人にこれを準用する。

第1054条〔相続財産管理人の報告義務〕

  管理人は相続債権者又は受遺者の請求あるときは、これに相続財産の狀況を報吿することを要する。

第1055条〔相続財産の管理人〕

  相続人あること分明なるに至りたるときは、法人は存立せさりしものとみなす但、管理人か其権限内において、為した行爲の效力を妨けする。

第1056条〔相続財産の管理〕

  管理人の代理権は相続人か相続の承認を為した時において、消滅する。
2 前項の場合において、は、管理人は遲滯なク相続人に対して管理の計算を為すことを要する。

第1057条〔相続人不存在の公告〕

  第1052条第二項に定めたる公吿ありたる後二个月内に相続人あること分明なるに至らさるときは、管理人は遲滯なク一切の相続債権者及び受遺者に対し一定の期間内に其請求の申出を為すへき旨を公吿することを要する但、其期間は二个月を下ることができない。

第79条〔第二項、第三項及び第1030条乃について〕

  第二項、第三項及び第1030条乃至第1037条の規定は前項の場合にこれを準用ス但、第1034条但、書の規定は此限に在らする。

第1058条〔相続人不存在の場合、〕

  前条第一項の期間滿了の後仍ほ相続人あること分明ならさるときは、裁判所は管理人又は検事の請求に因り相続人あらは一定の期間内に其権利を主張すべき旨を公吿することを要する但、其期間は一年を下ることができない。

第1059条〔前条期間内相続人たる権利主張スについて〕

  前条の期間内に相続人たる権利を主張する者ないときは、相続財産は国庫に帰属ス此場合において、は、第1056条第二項の規定を準用する。
2 相続債権者及び受遺者は、国庫に対して其権利を行うことができない。

第六章 遺言

第一節 総則

第1060条〔遺言の方式〕

  遺言は本法に定めたる方式に從ふでなければこれを為すことができない。

第1061条〔遺言能力〕

  滿十五年に達したる者は、遺言を為すことができる。

第1062条〔第4条、第9条、第12条及び第について〕

  第4条、第9条、第12条及び第14条の規定は遺言にはこれを適用する。

第1063条〔遺言の能力〕

  遺言者は、遺言を為す時において、其能力を有することを要する。

第1064条〔遺言者包括又特定名義以て其財産について〕

  遺言者は、包括又は特定の名義を以て其財産の全部又は一部を処分することができる但、遺留分に関する規定に違反することができない。

第1065条〔第968条及び第九百六十九について〕

  第968条及び第969条の規定は受遺者にこれを準用する。

第1066条〔後見の終了〕

  被後見人か後見の計算終了前に後見人又は其配偶者または直系卑属の利益と為るへき遺言を為したときは、其遺言は無效とする。
2 前項の規定は直系血族、配偶者又は兄弟姊妹か後見人たる場合にはこれを適用する。

第二節 遺言の方式

第一款 普通方式

第1067条〔自筆証書遺言の方式〕

  遺言は自筆証書、公正証書又は祕密証書によって、これを為すことを要する但、特別方式によることを許ス場合は、此限に在らする。

第1068条〔自筆証書遺言〕

  自筆証書によって、遺言を為すには遺言者其全文、日附及び氏名を自書しこれに捺印することを要する。
2 自筆証書中の揷入、削除其他の変更は遺言者其場所を指示しこれを変更したる旨を附記して特にこれに署名し且其変更の場所に捺印するでなければ其效なし。

第1069条〔公正証書遺言の方式〕

  公正証書によって、遺言を為すには左の方式に從ふことを要する。
一 証人二人以上の立會あること。
二 遺言者か遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人か遺言者の口述を筆記しこれを遺言者及び証人に讀聞かスこと。
四 遺言者及び証人か筆記の正確なることを承認したる後各自これに署名、捺印すること但、遺言者か署名すること能はさる場合において、は、公証人其事由を附記して署名に代ふることができる。
五 公証人か其証書は前四號に揭けたる方式に從ひて作りたるものなる旨を附記してこれに署名、捺印すること。

第1070条〔秘密証書遺言の方式〕

  祕密証書によって、遺言を為すには左の方式に從ふことを要する。
一 遺言者か其証書に署名、捺印すること。
二 遺言者か其証書を封し証書に用井たる印章を以てこれに封印すること。
三 遺言者か公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して自己の遺言書なる旨及び其筆者の氏名、住所を申述すること。
四 公証人か其証書提出の日附及び遺言者の申述を封紙に記載したる後遺言者及び証人と共にこれに署名、捺印すること。

第1068条〔秘密証書遺言〕

  第二項の規定は祕密証書による遺言にこれを準用する。

第1071条〔自筆証書遺言の方式〕

  祕密証書による遺言は前条に定めたる方式に缺クるものあるも第1068条の方式を具備するときは、自筆証書による遺言として其效力を有する。

第1072条〔秘密証書遺言〕

  言語を發すること能はさる者か祕密証書によって、遺言を為す場合において、は、遺言者は、公証人及び証人の前において、其証書は自己の遺言書なる旨並びに其筆者の氏名、住所を封紙に自書して第1070条第一項第三號の申述に代ふることを要する。
2 公証人は遺言者か前項に定めたる方式を踐みたる旨を封紙に記載して申述の記載に代ふることを要する。

第1073条〔禁治産者か本心復したる時於て遺について〕

  禁治産者か本心に復したる時において、遺言を為すには醫師二人以上の立會あることを要する。
2 遺言に立會ひたる醫師は遺言者か遺言を為す時において、心神喪失の狀況に在らさりし旨を遺言書に附記してこれに署名、捺印することを要する但、祕密証書によって、遺言を為す場合において、は、其封紙に右の記載及び署名、捺印を為すことを要する。

第1074条〔遺言の証人〕

  左に揭けたる者は、遺言の証人又は立會人たることができない。
一 未成年者。
二 禁治産者及び準禁治産者。
三 剝奪公権者及び停止公権者。
四 遺言者の配偶者。
五 推定相続人、受遺者及び其配偶者並びに直系血族。
六 公証人と家を同しクする者及び公証人の直系血族並びに筆生、雇人。

第1075条〔共同遺言の禁止〕

  遺言は二人以上同一の証書を以てこれを為すことができない。

第二款 特別方式

第1076条〔危急時遺言の証人〕

  疾病其他の事由によって、死亡の危急に迫りたる者か遺言を為さんと欲するときは、証人三人以上の立會を以て其一人に遺言の趣旨を口授してこれを為すことができる此場合において、は、其口授を受けたる者これを筆記して遺言者及び他の証人に讀聞かせ各証人其筆記の正確なることを承認したる後これに署名、捺印することを要する。
2 前項の規定によって、為した遺言は遺言の日より二十日内に証人の一人又は利害関係人より裁判所に請求して其確認を得るでなければ其效なし。
3 裁判所は遺言か遺言者の眞意に出てたる心証を得るでなければこれを確認することができない。

第1077条〔遺言による財産処分〕

  傳染病の爲め行政処分を以て交通を遮斷したる場所に在る者は、警察官一人及び証人一人以上の立會を以て遺言書を作ることができる。

第1078条〔軍人遺言の証人〕

  從軍中の軍人及び軍属は將校又は相当官一人及び証人二人以上の立會を以て遺言書を作ることができる若し將校及び相当官か其場所に在らさるときは、準士官又は下士一人を以てこれに代ふることができる。
2 從軍中の軍人又は軍属か疾病又は傷痍の爲め病院に在るときは、其院の醫師を以て前項に揭けたる將校又は相当官に代ふることができる。

第1079条〔軍人遺言の証人〕

  從軍中疾病、傷痍其他の事由によって、死亡の危急に迫りたる軍人及び軍属は証人二人以上の立會を以て口頭にて遺言を為すことができる。
2 前項の規定に從ひて為した遺言は証人其趣旨を筆記してこれに署名、捺印し且証人の一人又は利害関係人より遲滯なク理事又は主理に請求して其確認を得るでなければ其效なし。

第1076条〔準用規定〕

  第三項の規定は前項の場合にこれを準用する。

第1080条〔艦船中遺言の証人〕

  艦船中に在る者は、軍艦及び海軍所属の船舶において、は、將校又は相当官一人及び証人二人以上其他の船舶において、は、船長又は事務員一人及び証人二人以上の立會を以て遺言書を作ることができる。
2 前項の場合において、將校又は相当官か其艦船中に在らさるときは、準士官又は下士一人を以てこれに代ふることができる。

第1081条〔艦船中の遺言〕

  第1079条の規定は艦船遭難の場合にこれを準用ス但、海軍の所属に非さる船舶中に在る者か遺言を為した場合において、は、其確認はこれを裁判所に請求することを要する。

第1082条〔特別方式遺言の証人〕

  第1077条、第1078条及び第1080条の場合において、は、遺言者、筆者、立會人及び証人は各自遺言書に署名、捺印することを要する。

第1083条〔第1077条乃至第1081条場について〕

  第1077条乃至第1081条の場合において、署名又は捺印すること能はさる者あるときは、立會人又は証人は其事由を附記することを要する。

第1084条〔第1068条第二項及び第千七十について〕

  第1068条第二項及び第1073条乃至第1075条の規定は前八条の規定による遺言にこれを準用する。

第1085条〔遺言の方式〕

  前九条の規定によって、為した遺言は遺言者か普通方式によって、遺言を為すことができるるに至りたる時より六个月間生存するときは、其效なし。

第1086条〔公正証書遺言〕

  日本の領事の駐在する地に在る日本人か公正証書又は祕密証書によって、遺言を為さんと欲するときは、公証人の職務は領事これを行う。

第三節 遺言の效力

第1087条〔遺言の効力〕

  遺言は遺言者の死亡の時より其效力を生する。
2 遺言に停止条件を附したる場合において、其条件か遺言者の死亡後に成就したるときは、遺言は条件成就の時より其效力を生する。

第1088条〔遺贈の放棄〕

  受遺者は、遺言者の死亡後何時にても遺贈の抛棄を為すことができる。
2 遺贈の抛棄は遺言者の死亡の時に遡りて其效力を生する。

第1089条〔遺贈義務者其他利害関係人相当期について〕

  遺贈義務者其他の利害関係人は相当の期間を定め其期間内に遺贈の承認又は抛棄を為すへき旨を受遺者に催吿することができる若し受遺者か其期間内に遺贈義務者に対して其意思を表示せさるときは、遺贈を承認したるものとみなす。

第1090条〔受遺者か遺贈承認又抛棄爲さスしについて〕

  受遺者か遺贈の承認又は抛棄を爲さスして死亡したるときは、其相続人は自己の相続権の範圍内において、承認又は抛棄を為すことができる但、遺言者か其遺言に別段の意思を表示したるときは、其意思に從ふ。

第1091条〔規定〕

  遺贈の承認及び抛棄はこれを取消スことができない。

第1022条〔第二項規定遺贈承認及び抛棄之準について〕

  第二項の規定は遺贈の承認及び抛棄にこれを準用する。

第1092条〔包括遺贈と遺産相続〕

  包括受遺者は、遺産相続人と同一の権利義務を有する。

第1093条〔受遺者遺贈か弁済期至らさる間遺について〕

  受遺者は、遺贈か弁済期に至らさる間は遺贈義務者に対して相当の擔保を請求することができる停止条件附遺贈について其条件の成否未定の間亦同し。

第1094条〔遺贈の果実取得〕

  受遺者は、遺贈の履行を請求することができるる時より果実を取得ス但、遺言者か其遺言に別段の意思を表示したるときは、其意思に從ふ。

第1095条〔受遺者の死亡〕

  遺贈義務者か遺言者の死亡後遺贈の目的物について費用を出たしたるときは、第299条の規定を準用する。
2 果実を收取する爲めに出たしたる通常の必要費は果実の價格を超えさる限度において、其償還を請求することができる。

第1096条〔受遺者の死亡〕

  遺贈は遺言者の死亡前に受遺者か死亡したるときは、其效力を生せする。
2 停止条件附遺贈については受遺者か其条件の成就前に死亡したるとき、亦同し但、遺言者か其遺言に別段の意思を表示したるときは、其意思に從ふ。

第1097条〔放棄の効力〕

  遺贈か其效力を生せさるとき、又は抛棄に因り其效力ないに至りたるときは、受遺者か受クへかりしものは相続人に帰属ス但、遺言者か其遺言に別段の意思を表示したるときは、其意思に從ふ。

第1098条〔遺贈其目的たる権利か遺言者死亡について〕

  遺贈は其目的たる権利か遺言者の死亡の時において、相続財産に属せさるときは、其效力を生せス但、其権利か相続財産に属せさることあるに拘はらスこれを以て遺贈の目的と為したものと認むへきときは、此限に在らする。

第1099条〔夫婦財産制の約定〕

  相続財産に属せさる権利を目的とする遺贈か前条但、書の規定によって、有效なるときは、遺贈義務者は、其権利を取得してこれを受遺者に移轉する義務を負う若しこれを取得すること能はさるか又はこれを取得するについて過分の費用を要するときは、其價額を弁償することを要する但、遺言者か其遺言に別段の意思を表示したるときは、其意思に從ふ。

第1000条〔不特定物以て遺贈目的為した場について〕

  不特定物を以て遺贈の目的と為した場合において、受遺者か追奪を受けたるときは、遺贈義務者は、これに対して賣主と同しク擔保の責に任する。
2 前項の場合において、物に瑕疵ありたるときは、遺贈義務者は、瑕疵ない物を以てこれに代ふることを要する。

第1001条〔嫡出の推定〕

  遺言者か遺贈の目的物の滅失または変造又は其占有の喪失に因り第三者に対して償金を請求する権利を有するときは、其権利を以て遺贈の目的と為したものと推定する。
2 遺贈の目的物か他の物と附合又は混和したる場合において、遺言者か第243条乃至第245条の規定に依り合成物又は混和物の單獨所有者又は共有者と爲りたるときは、其全部の所有権又は共有権を以て遺贈の目的と為したものと推定する。

第1002条〔受遺者の欠格〕

  遺贈の目的たる物又は権利か遺言者の死亡の時において、第三者の権利の目的たるときは、受遺者は、遺贈義務者に対し其権利を消滅せしむへき旨を請求することができない但、遺言者か其遺言に反対の意思を表示したるときは、此限に在らする。

第1003条〔債権以て遺贈目的為した場合、於について〕

  債権を以て遺贈の目的と為した場合において、遺言者か弁済を受け且其受取りたる物か尙ほ相続財産中に存するときは、其物を以て遺贈の目的と為したものと推定する。
2 金錢を目的とする債権については相続財産中に其債権額に相当する金錢ないとき、であっても其金額を以て遺贈の目的と為したものと推定する。

第1004条〔負擔附遺贈受けたる者遺贈目的價について〕

  負擔附遺贈を受けたる者は、遺贈の目的の價額を超えさる限度において、のみ其負擔したる義務を履行する責に任する。
2 受遺者か遺贈の抛棄を為したときは、負擔の利益を受クへき者自ら受遺者と為ることができる但、遺言者か其遺言に別段の意思を表示したるときは、其意思に從ふ。

第1005条〔限定承認〕

  負擔附遺贈の目的の價額か相続の限定承認又は遺留分回復の訴によって、減少したるときは、受遺者は、其減少の割合に応して其負擔したる義務を免る但、遺言者か其遺言に別段の意思を表示したるときは、其意思に從ふ。

第四節 遺言の執行

第1006条〔遺言書保管者相続開始知りたる後について〕

  遺言書の保管者は、相続の開始を知りたる後遲滯なクこれを裁判所に提出して其検認を請求することを要する遺言書の保管者ない場合において、相続人か遺言書を發見したる後亦同し。
2 前項の規定は公正証書による遺言にはこれを適用する。
3 封印ある遺言書は裁判所において、相続人又は其代理人の立會を以てするでなければこれを開封することができない。

第1007条〔遺言書の検認〕

  前条の規定によって、遺言書を提出することを怠り、其検認を經スして遺言を執行し又は裁判所外において、其開封を為した者は、二百圓以下の過料に処せらる。

第1008条〔遺言執行者の指定〕

  遺言者は、遺言を以て一人又は数人の遺言執行者を指定し又は其指定を第三者に委託することができる。
2 遺言執行者指定の委託を受けたる者は、遲滯なク其指定を爲してこれを相続人に通知することを要する。
3 遺言執行者指定の委託を受けたる者か其委託を辭せんとするときは、遲滯なク其旨を相続人に通知することを要する。

第1009条〔遺言執行者の就職〕

  遺言執行者か就職を承諾したるときは、直ちに其任務を行うことを要する。

第1000条〔相続人其他利害関係人相当期間定について〕

  相続人其他の利害関係人は相当の期間を定め其期間内に就職を承諾するや否やを確答すべき旨を遺言執行者に催吿することができる若し遺言執行者か其期間内に相続人に対して確答を爲ささるときは、就職を承諾したるものとみなす。

第1001条〔遺言の能力〕

  無能力者及び破産者は、遺言執行者たることができない。

第1002条〔遺言執行者の選任〕

  遺言執行者ないとき、又は之ないに至りたるときは、裁判所は利害関係人の請求に因りこれを選任することができる。
2 前項の規定によって、選任したる遺言執行者は、正当の理由あるでなければ就職を拒むことができない。

第1003条〔遺言執行者遲滯なク相続財産目録について〕

  遺言執行者は、遲滯なク相続財産の目録を調製してこれを相続人に交付することを要する。
2 遺言執行者は、相続人の請求あるときは、其立會を以て財産目録を調製し又は公証人をしてこれを調製せしむることを要する。

第1004条〔遺言執行者の財産管理〕

  遺言執行者は、相続財産の管理其他遺言の執行に必要なる一切の行爲を為す権利義務を有する。

第644条〔乃至第647条及び第六百五について〕

  乃至第647条及び第650条の規定は遺言執行者にこれを準用する。

第1005条〔遺言執行者ある場合、於て相続人相について〕

  遺言執行者ある場合において、は、相続人は相続財産を処分し其他遺言の執行を妨クへき行爲を為すことができない。

第1006条〔前三条規定遺言か特定財産関するについて〕

  前三条の規定は遺言か特定財産に関する場合において、は、其財産についてのみこれを適用する。

第1007条〔規定〕

  遺言執行者は、これを相続人の代理人とみなす。

第1008条〔遺言執行者の欠格〕

  遺言執行者は、已むことができるさる事由あるでなければ第三者をして其任務を行はしむることができない但、遺言者か其遺言に反対の意思を表示したるときは、此限に在らする。
2 遺言執行者か前項但、書の規定に依り第三者をして其任務を行はしむる場合において、は、相続人に対し第105条に定めたる責任を負う。

第1009条〔複数執行者の任務〕

  数人の遺言執行者ある場合において、は、其任務の執行は過半数を以てこれを決ス但、遺言者か其遺言に別段の意思を表示したるときは、其意思に從ふ。
2 各遺言執行者は、前項の規定に拘はらス保存行爲を為すことができる。

第1020条〔遺言執行者の報酬〕

  遺言執行者は、遺言に報酬を定めたるとき、に限りこれを受クることができる。
2 裁判所において、遺言執行者を選任したるときは、裁判所は事情に依り其報酬を定めるることができる。
3 遺言執行者か報酬を受クへき場合において、は、第648条第二項及び第三項の規定を準用する。

第1021条〔遺言執行者の解任〕

  遺言執行者か其任務を怠りたるとき、其他正当の事由あるときは、利害関係人は其解任を裁判所に請求することができる。
2 遺言執行者は、正当の事由あるときは、就職の後であっても、其任務を辭することができる。

第1022条〔第654条及び第六百五十五について〕

  第654条及び第655条の規定は遺言執行者の任務か終了したる場合にこれを準用する。

第1023条〔婚姻費用の負担〕

  遺言の執行に関する費用は相続財産の負擔とス但、これによって、遺留分を減することができない。

第五節 遺言の取消

第1024条〔遺言の取消の方式〕

  遺言者は、何時にても遺言の方式に從ひて其遺言の全部又は一部を取消スことができる。

第1025条〔遺言の抵触〕

  前の遺言と後の遺言と牴觸するときは、其牴觸する部分については後の遺言を以て前の遺言を取消したるものとみなす。
2 前項の規定は遺言と遺言後の生前処分其他の法律行爲と牴觸する場合にこれを準用する。

第1026条〔遺贈の目的〕

  遺言者か故意に遺言書を毀滅したるときは、其毀滅したる部分については遺言を取消したるものとみなす遺言者か故意に遺贈の目的物を毀滅したるとき、亦同し。

第1027条〔遺言の効力〕

  前三条の規定によって、取消されたる遺言は其取消の行爲か取消され又は效力を生せさるに至りたるとき、であっても其效力を回復せス但、其行爲か詐欺又は强迫による場合は、此限に在らする。

第1028条〔遺贈の放棄〕

  遺言者は、其遺言の取消権を抛棄することができない。

第1029条〔負擔附遺贈受けたる者か其負擔しについて〕

  負擔附遺贈を受けたる者か其負擔したる義務を履行せさるときは、相続人は相当の期間を定めて其履行を催吿し若し其期間内に履行ないときは、遺言の取消を裁判所に請求することができる。

第七章 遺留分

第1030条〔推定家督相続人の制限〕

  法定家督相続人たる直系卑属は遺留分として被相続人の財産の半額を受ク。
2 此他の家督相続人は遺留分として被相続人の財産の三分の一を受ク。

第1031条〔遺産相続人たる直系卑属遺留分しについて〕

  遺産相続人たる直系卑属は遺留分として被相続人の財産の半額を受ク。
2 遺産相続人たる配偶者又は直系尊属は遺留分として被相続人の財産の三分の一を受ク。

第1032条〔遺留分被相続人か相続開始時於てについて〕

  遺留分は被相続人か相続開始の時において、有せし財産の價額に其贈与したる財産の價額を加へ其中より債務の全額を控除してこれを算定する。
2 条件附権利又は存續期間の不確定なる権利は裁判所において、選定したる鑑定人の評價に從ひ其價格を定める。
3 家督相続の特権に属する権利は遺留分の算定に関しては其價額を算入せする。

第1033条〔贈与相続開始前一年間為したもについて〕

  贈与は相続開始前一年間に為したものに限り前条の規定によって、其價額を算入ス一年前に為したものであっても、当事者雙方か遺留分権利者に損害を加ふることを知りてこれを為したとき、亦同し。

第1034条〔遺留分の減殺〕

  遺留分権利者及び其承継人は遺留分を保全するに必要なる限度において、遺贈及び前条に揭けたる贈与の減殺を請求することができる。

第1035条〔遺留分の減殺〕

  条件附権利又は存續期間の不確定なる権利を以て贈与又は遺贈の目的と為した場合において、其贈与又は遺贈の一部を減殺すべきときは、遺留分権利者は、第1132条第二項の規定によって、定めたる價格に從ひ直ちに其殘部の價額を受贈者又は受遺者に給付することを要する。

第1036条〔贈与遺贈減殺したる後非され之減について〕

  贈与は遺贈を減殺したる後でなければこれを減殺することができない。

第1037条〔遺贈の目的〕

  遺贈は其目的の價額の割合に応してこれを減殺ス但、遺言者か其遺言に別段の意思を表示したるときは、其意思に從ふ。

第1038条〔贈与減殺後贈与より始め順次前贈について〕

  贈与の減殺は後の贈与より始め順次に前の贈与に及ふ。

第1039条〔受贈者其返還すべき財産外尙ほ減について〕

  受贈者は、其返還すべき財産の外尙ほ減殺の請求ありたる日以後の果実を返還することを要する。

第1040条〔遺留分の減殺〕

  減殺を受クへき受贈者の無資力によって、生したる損失は遺留分権利者の負擔に帰する。

第1041条〔負擔附贈与其目的價額中より負擔について〕

  負擔附贈与は其目的の價額中より負擔の價額を控除したるものについて其減殺を請求することができる。

第1042条〔遺留分の減殺〕

  不相当の対價を以て為した有償行爲は当事者雙方か遺留分権利者に損害を加ふることを知りて為したものに限りこれを贈与とみなす此場合において、遺留分権利者か其減殺を請求するときは、其対價を償還することを要する。

第1043条〔遺留分の減殺〕

  減殺を受クへき受贈者か贈与の目的を他人に讓渡したるときは、遺留分権利者に其價額を弁償することを要する但、讓受人か讓渡の当時遺留分権利者に損害を加ふることを知りたるときは、遺留分権利者は、これに対しても減殺を請求することができる。
2 前項の規定は受贈者か贈与の目的の上に権利を設定したる場合にこれを準用する。

第1044条〔遺留分の減殺〕

  受贈者及び受遺者は、減殺を受クへき限度において、贈与又は遺贈の目的の價額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免るることができる。
2 前項の規定は前条第一項但、書の場合にこれを準用する。

第1045条〔相続回復請求権〕

  減殺の請求権は遺留分権利者か相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈ありたることを知りたる時より一年間これを行はさるときは、時效によって、消滅ス相続開始の時より十年を經過したるとき、亦同し。

第1046条〔遺留分への準用〕

  第995条、第1004条、第1005条、第1007条及び第1008条の規定は遺留分にこれを準用する。