登記事項証明書とは、コンピュータ化された登記記録(古いシステムの「登記簿」)に記録されている事項の全部又は一部を証明した書面のことです。
(末尾に、『これは登記記録に…を証明した書面である。』とされ証明印が押されます。
登記事項証明書には,以下の4種類があります。
①現在事項証明書
②履歴事項証明書
③閉鎖事項証明書
④代表者事項証明書
登記簿とは、 コンピュータ化前の時代のことをいいます。「簿」という漢字は、書き込むために紙を綴じたモノ(ex.帳簿、帳面、簿記)で。例えば名古屋法務局では平成6年までは紙の登記簿でした。
「謄」という漢字は、原本の内容の全体をそのまま完全に写すことをいいます。謄の反対側の「抄」といいうと、全体ではなく一部というように限定されます。
そうして、登記簿+謄本とは、登記簿の全部文書であり、それが電子化によったものが登記事項(+全部)証明書です。同様に登記簿抄本が電子化によったものが登記事項一部証明書です。
紙であったものが紙でなくなった。紙ゆえに「簿」でありまた謄(抄)であったが、紙でなくなったからその漢字を使用することが不適になった。紙でなくなったなら、何に変わったかというと『電磁的記録』なのだが、紙と同列の何かに変わったのではなく、紙の上位概念の情報(もしくは記録)になった。そこで、より抽象的な「事項(記録)・全部/一部」を使わざるを得なくなった、ということでしょうか。
さらにです。紙でなくなったことから、現在のみを表示することも、履歴を表示することもシステムで可能となったため種類が増えてしまいました。単純に組み合わせをすれば、上記①乃至④に全部/一部の2種があるから、4✕2で8種類になります。
こういった多種類の区別に拘泥するとひんしゅくを買います。また区別をする必要な場面がほとんどありません。簿も一つの事項(記録)です。「簿」という漢字が竹冠です。私はこう思います。まず、紙ではなく竹に書かれたがゆえに「簿」であった。しかし、紙から竹に成り代わっても 「簿」 ですませた。だから、電磁的記録に成り代わっても「簿」という漢字を使ってもよいと思うのです。記録される媒体が竹である場合はその概念を「簿」という。紙(木)であっても「簿」と概念付けてよい。鉄でも布でも「簿」でもいいと思うのです。したがって、電磁的記録を含めそういった記録されたものを「簿」としてもいいと思うです。紙・木などのこれまでの記録は、二次元で文字であり、電磁的記録は二次元ではあく二進数で記録されるがゆえにレベルは違うということはわからないでもないですが。
これまでは、昔のように『登記簿謄本』と呼んでいました。上述のような理屈を前面に出していたというより、そのほうが、とおりがよかったからです。しかし、もうあがられることはできない時代に入りましたので、『登記事項証明書」と呼ぶことにします。
補記:戸籍謄本もまったく同じ事情にあります。つまり、電子情報となったため、戸籍全部事項証明書、戸籍一部事項証明書…などと。戸籍も当面は『戸籍謄本』としたい。 登記全部事項証明書 /戸籍全部事項証明書 を見間違えることはありません。登記簿謄本/戸籍謄本 であればとてもすっきりするのは、倍の文字数になってしまったため、中心用語(登記・戸籍)への焦点が分散してしまうからだと思われます。